最新記事
軍艦島

軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも劣悪な労働環境でストライキ頻発、殺人事件も...

2025年1月24日(金)11時40分
風来堂(編集プロダクション)*PRESIDENT Onlineからの転載

同じ島民でも職種により生活環境は異なっていた

当時の端島では、三菱鉱業の管理職や職員、鉱員、島の生活を支える商店などの立場の違いで、生活環境も大きく異なった。

炭鉱長の息子である賢将(清水尋也)の家は、応接室などもある島内唯一の戸建て住宅だが、鉱員の息子だった鉄平(神木隆之介)の家は高層建築に長屋のような狭い住宅がたくさん並ぶ、鉱員住宅だ。風呂などはもちろんなく、トイレも共同だった。


『カラーでよみがえる軍艦島』には、元島民の石川東(あずま)さんのインタビューが掲載されていて、当時の暮らしを語っている。

「6畳と4畳半の二間に、両親と祖父、兄弟5人の家族8人で暮らしていました。48号棟に入居した当時はたいした家電もなくて、高校までは毎朝、かまどで薪を燃やしてご飯をたいていました」(同書)

当時、端島といえば日本最先端の環境が整った先進的な生活だった、というイメージで語られることが多いが、家庭によっても多少異なっていたのだろうか。

ピーク時には南北約480m、東西約160mの小さな島に約5300人が暮らし、人口密度は世界一とされた。その当時の様子が、見事に再現されているのだ。

台風を怖がっていては本物の島民になれない?

第2話では、端島を大型の台風9号が襲った。寺の1階に暮らしていたリナとともに多くの島民が本堂に避難し、防波堤を越えてくる高波の浸水を防ぐため、朝子が食堂の前に土嚢(どのう)を懸命に積む様子が描かれていた。

しかし、当時の人々は脅威を感じていたばかりでもないようだ。

「ただ、端島の住民にとって脅威だったはずの高波は、日常の光景の一部であったのもまた事実だ。台風が島に接近した際に危険なのにもかかわらず、大波見物に出向く住民も少なくなかったようだ。『台風を怖がっていては本物の島民にはなれない』とも言われていたらしい。」(同書)

実際に、1956(昭和31)年と1959(昭和34)年には、大型の台風が端島に上陸し、大きな被害をもたらしている。1956(昭和31)年の台風9号では島の南側と西側の護岸が約100mにわたって崩壊し、木造の商店なども被害を受けた。

このときは波高8mもの大波がたたきつけたという。また、真水運搬船がやってこないことで、島の飲料水が枯渇するのも実際にあった大きな問題だった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB、動向次第で利下げや利上げに踏み切る=オース

ビジネス

ユーロ圏の成長・インフレリスク、依然大きいが均衡=

ビジネス

アングル:日銀、追加利上げへ慎重に時機探る 為替次

ワールド

トランプ大統領、ベネズエラとの戦争否定せず NBC
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中