最新記事

世界に挑戦する日本人20

12歳になった天才ドラマーYOYOKA、 ロックの本場アメリカへ行く

2022年9月1日(木)09時40分
長岡義博(本誌編集長)

YOYOKAの才能はアメリカに向かう Yoshimi.

<本誌が2019年に最年少で「世界が尊敬する日本人100」の1人に選んだ天才ドラマー、YOYOKAがロックの本場アメリカに挑戦することを決めた>

YOYOKA(相馬世世歌)を「世界を揺さぶる9歳天才ドラマー」として本誌が「世界が尊敬する日本人100」の1人に選んだのは2019年のこと。それから3年が経ち、YOYOKAは本気で世界を揺るがす旅に出ることにした。家族全員でロックの本場であるアメリカ西海岸に移住することを決めたのだ。

20220906issue_cover200.jpgレッド・ツェッペリンの名曲のドラミングをオリジナルメンバーである故ジョン・ボーナムばりのグルーブ感と技術で再現したYouTube動画が世界の度肝を抜く/その演奏を見たツェッペリンの元ボーカル、ロバート・プラントがコメント/人気が世界に広がり、アメリカの人気トーク番組『エレンの部屋』にゲスト出演......と、快進撃を続けていたYOYOKAを止めたのは、新型コロナウイルスだった。

20年と21年のプランはほぼすべてキャンセルになり、ライブができず、海外にも行けない。「それが(彼女の)フラストレーションで、そばで見ていてやるせなかった」と、父親の章文は言う。21年11月に久しぶりに家族でアメリカに行き、ロサンゼルスで生き生きと演奏するYOYOKAの「ここが自分がいるべき場所で、挑戦しないと後悔する」という言葉を聞いて、「チャレンジしなければ親として失格」(章文)と、母親と長男を含めた家族4人での西海岸移住を決めた。

レッド・ツェッペリンに続いて伝説的ロックバンド、ディープパープルのドラマーであるイアン・ペイスと動画でコラボ。ロサンゼルスの伝説的ライブバーでは、先に演奏した腕に入れ墨のある巨漢のプロドラマー、ジョー・トラバースに負けない音を鳴らし、観客を感動させた。アメリカのアーティストビザ取得のため推薦状を書いた1人は、共演者のシンディ・ローパー......「YOYOKA伝説」を裏付けるエピソードには今も事欠かない。

アメリカに渡るため、章文は務めていた札幌市の公務員の仕事を辞めた。一般的な日本人にとって円安ドル高の今、アメリカで暮らすことは大きな出費を強いられる。日本にはクラシック音楽以外、かつ15歳より若い才能の海外挑戦を援助するシステムがほぼなく、相馬家の当面の暮らしはこれまでの貯蓄と日本のリモートの仕事、音楽活動は渡米支援で始めたクラウドファンディングやスポンサー契約で賄う。

正確で力強いドラミングを磨きつつ、通っていた北海道の小学校の図書室で6年間に1000冊以上の本を読み、表彰されたYOYOKA。ロックの中心地であるアメリカでトップアーティストと共演し、学んだ英語を使って自分の言葉で発信する、そして「アメリカの多様性を作詞作曲に生かす」――という目標も、手の届かないものとは決して思わせない。

12歳になった天才ドラマーの生み出すグルーブが、アメリカから世界を揺さぶる日は遠くない。

相馬世世歌
Yoyoka
●ドラマー

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハセット氏のFRB議長候補指名、トランプ氏周辺から

ビジネス

FRBミラン理事「物価は再び安定」、現行インフレは

ワールド

ゼレンスキー氏と米特使の会談、2日目終了 和平交渉

ビジネス

中国万科、償還延期拒否で18日に再び債権者会合 猶
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 6
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 7
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 8
    世界の武器ビジネスが過去最高に、日本は増・中国減─…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 5
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 6
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中