最新記事

インタビュー

「東大王」紀野紗良が「もっと早く読んでおきたかった」と悔やむ1冊の本

2022年1月14日(金)10時55分
朴順梨(ライター)
紀野紗良

紀野紗良/2000年北海道生まれ。現役で合格し、東京大学理科2類に入学。謎解きサークル「AnotherVision」に所属し、クイズ番組『東大王』メンバーとして活躍 Photo:遠藤 宏

<北海道から上京して東大へ。人気番組『東大王』で活躍する紀野紗良だが、運をつかむことから、転機、今後の進路まで、「常に心掛けておいたほうがよいことが凝縮されている」と評する本を入り口に話を聞いた>

地方で生まれ育った女性が、大学進学で東京にやって来る。ありふれた話に思えるが、そこには1人1人違った喜びや悩み、そして戸惑いがあるものだ。特に進学先が東京大学なら、なおさらだろう。

全国から集まった選りすぐりの優等生はもちろんのこと、たくさんの文化資本や人脈を抱える東京生まれの「上流」な者たちも多く存在している。まさに群雄割拠の中で自分の軸を確立していくのは、容易なことではないからだ。

2022年の春に東大を卒業する紀野紗良(きの・さら)さんも、そんな地方出身者の1人だった。だが今では、人気のクイズ番組『東大王』(TBS系列)のメンバーとして活躍し、全国に知られる存在だ。

そんな彼女が「もっと早く読んでおきたかった」と悔やむのが、スタンフォード大学工学部教授のティナ・シーリグによる『20歳の時に知っておきたかったこと――スタンフォード大学集中講義』(CCCメディアハウス、2010年刊行)だ。

30万部ベストセラーの同書は、2020年11月、大幅に増補された 『新版 20歳のときに知っておきたかったこと――スタンフォード大学集中講義』(CCCメディアハウス)が刊行されている。

紀野さんは、なぜ「もっと早くに...」と思ったのだろうか。運をつかむこと、京大志望だったこと、東大入学後の苦労、本の執筆と春からの進路......。『20歳の時に知っておきたかったこと』を入り口に、話を聞いた。

invu20220109-20yrsoldbook-2.jpg

Photo:遠藤 宏

この本を知ることで、チャンスの数が増えるはず


サークルの先輩の松丸亮吾さんや、『東大王』先輩の水上颯さんが帯にコメントをしていたので、ずっと気になっていたんです。でも初めて読んだのは21歳になってから。だから「もう少し早く、20歳のうちに読んでおけばよかった」と思いました(笑)。

松丸さんが「知らないまま過ごす10年より、知ってから過ごす1年がずっと濃い」とおっしゃっていますが、まさにその通りだなって。生活していく中で常に心掛けておいたほうがよいことが凝縮されていて、この本を読まずに漠然と過ごすより知って生きていくほうが、明らかにチャンスの数が変わってくるだろうなと思いました。

特に印象に残ったのは、第8章「レモネードがヘリコプターに化ける――幸運は自分で呼び込むもの」だという。

成功した人は目立つ瞬間ばかりが注目されがちだが、「幸運とは、小さな選択やささいな行動の積み重ねで、毎日少しずつ向上した結果、長期的に成功する確率が上がったことをいう」といったエピソードに、心から共感できたそうだ。


例えば「幸運に恵まれるとは、雷に打たれるようなことではなく、風をつかまえるのに似ている」とか、「扉はたくさんあり、その向こうには驚くほどチャンスがあるのだから、扉を開けようとしさえすればいい」といったことが書いてあるのですが、ただ待っているのではなく自分から動いて、チャンスの種をあちこちにまいておくことが必要だと知りました。

この本は具体例が多く、小説のような感覚で気軽に読めます。どのように人生を設計していくか、どのようにしてやりたいこととやらなきゃいけないことを両立させていくかのヒントがたくさんあるので、これから20歳を迎える人たちに手に取ってもらいたいと思います。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中