最新記事

投資の基礎知識

ビットコインを買った真面目な税理士の末路

2017年10月5日(木)16時39分
川島寛貴 ※株の窓口より転載

ケネディと靴磨きの少年の話

アメリカの金融の中心地・ウォール街の片隅で、この「サイン」は現れました。

第35代アメリカ合衆国大統領ジョン・F・ケネディの父、ジョセフ・ケネディは政治家であり、証券取引委員会の初代委員長を務めた経験をもつ有名な投資家でもありました。

1929年10月、アメリカはバブルの真っ只中。ケネディがニューヨークの街頭で靴磨きの少年に靴を磨かせていると、「いまこの株が上がりますよ!」「相場はまだまだ上昇し続けるから、買わないと損をしますよ」などと、まったくの素人であるはずの少年が雄弁に語ります。その姿を見て、ケネディは保有するすべての株式を売却しました。

その後ほどなくして相場は大暴落し、バブルは崩壊することとなりました。それが歴史に残る「暗黒の木曜日」であり、ウォール街大暴落、さらには世界大恐慌への幕開けでした。ダウ工業株平均は1か月にわたって下げ続けた後、上げ下げを繰り返しながら、1932年7月8日に最高値から89%下落の41.22ドルを付けるまで下げ続けました(最高値はの1929年9月3日の381.17ドル)。

大半の投資家が大きな損失を出すなか、ケネディは「なんの知識もない靴磨きの少年の言動」によって無傷でいることができた――いまもウォール街のみならず投資の世界で語り継がれる伝説です(実際には「株式市場はそろそろ危ない」というパトロンの忠告に従ったとも言われていますが)。

この話にはいろいろな教訓が含まれていますが、相場の歴史(バブル崩壊の歴史)は何度も繰り返し、このような顛末を私たちに見せてくれます。

税理士が買ったビットコインはいま......

では、私に相談してきた税理士はどうなったでしょうか? 少しチャートを進めてみましょう。

kabumado171005-chart2.png

中国がビットコインについての規制強化を行ったことや、米JPモルガン・チェースの最高経営責任者(CEO)が「ビットコインは詐欺だ」といった発言をしたことなどもあり、一時30%も急落することとなりました。

その後、急激に戻しているため「崩壊」とは言えませんが、やはりこれは約90年前の「靴磨きの少年」と同じだと言えるのではないでしょうか。驚くべきことに、素人(=税理士)が重い重い腰を上げ、満を持して市場に参加したところが見事に天井(高値)になっています。まさに、歴史は繰り返す。

理由のひとつは「この事実を知るプロがマーケットには存在し、狙っている」からです。つまり、相場が急上昇した最終局面に「素人のカモ」が参入してくるや、その買い玉(買いのポジション)に売り玉(売りのポジション)を当てて高値で売り抜けるのです。それをきっかけに急落が急落を呼び(いわゆる「投げ売り」)、大暴落につながるのです。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ポーランド大統領選、6月決選投票へ 親欧州市長と右

ワールド

グリーンランド問題、中国はデンマークの主権を全面尊

ワールド

ポルトガル総選挙、与党連合が勝利も過半数に届かず 

ワールド

EU・英、防衛や安全保障で暫定合意 首脳会議に先立
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2029年 火星の旅
特集:2029年 火星の旅
2025年5月20日号(5/13発売)

トランプが「2029年の火星に到着」を宣言。アメリカが「赤い惑星」に自給自足型の都市を築く日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内にはっきり表れていた「重篤な病気の初期症状」
  • 4
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 5
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
  • 6
    刺さった「トゲ」は放置しないで...2年後、女性の足…
  • 7
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 8
    飛行機内の客に「マナーを守れ!」と動画まで撮影し…
  • 9
    サメによる「攻撃」増加の原因は「インフルエンサー…
  • 10
    MEGUMIが私財を投じて国際イベントを主催した訳...「…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    カヤック中の女性がワニに襲われ死亡...現場動画に映…
  • 5
    母「iPhone買ったの!」→娘が見た「違和感の正体」に…
  • 6
    あなたの下駄箱にも? 「高額転売」されている「一見…
  • 7
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 8
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内に…
  • 9
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習…
  • 10
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 9
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中