孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活のシナリオとは?
MASAYOSHI SON
出資先は動物的嗅覚で
しかし奈落の底からでもはい上がるのが孫の真骨頂。資本主義史上、彼ほどの富を築き、かつ失ってきた投資家は例を見ないのではないか。
ソフトウエアの卸売業者として頭角を現した若い頃から、孫は大胆な行動に出る天賦の才と、壮大な構想を持つカリスマ的な若手起業家への揺るぎない信頼、そしてどんな失敗からも立ち直る能力を武器としてきた。
何度転んでも立ち上がる。孫はキャリアを通じてそれを繰り返してきた。そしてそのたびに、彼の財務基盤はますます強固になっているように思える。日本で「七転び八起き」のダルマに例えられているのもうなずける。
投資家・孫正義にとって最初の大きな成功は、1995年の米ヤフーへの出資だった。当時のヤフーは検索サイトの最大手。この投資が当たって、孫は一時、資産総額で世界一の大金持ちになった。しかし、その後のヤフーは成長戦略を誤って失速。孫の率いるソフトバンクの時価総額も1800億ドル超から25億ドルへと98%も下落した。
だが孫はそこからはい上がった。幸運だったのは、当時まだ無名だった中国のEC企業アリババに2000万ドルを投じ、株式の34%を取得していたこと。彼がアリババの創業者ジャック・マーとのわずか6分の会談の後、「動物的嗅覚」で出資を決めたという話は有名だ。