最新記事
アフリカ

アフリカ地域決済システム「PAPSS」とは何か? 決済コストが激減、課題は「トランプリスク」

2025年6月29日(日)16時26分
ケニヤ紙幣

6月20日、アフリカの地域通貨決済システム「PAPSS(パンアフリカ・ペイメンツ・アンド・セツルメンツ・システム)」が、じわじわと地歩を固めつつある。写真はケニヤ紙幣。ナイロビで2023年5月撮影(2025年 ロイター/Monicah Mwangi)

アフリカの地域通貨決済システム「PAPSS(パンアフリカ・ペイメンツ・アンド・セツルメンツ・システム)」が、じわじわと地歩を固めつつある。決済当事者が自国通貨を利用することが可能で、従来のドル決済に比べてコストが格段に軽減されることが大きなメリットになる。課題は、ドル依存脱却の動きに対して関税を通じた「報復」をちらつかせているトランプ米大統領とどう折り合うかだ。

中国やロシアも、ドル決済圏や西側の金融システムとは異なる独自の決済システムの開発を推進している。背景には、世界の貿易や国際秩序の構造を転換させようとしているトランプ氏に対抗しなければならないという切迫感がある。

ただPAPSSの場合は、開発理由はこれらの地政学的要因よりも、あくまでコストの問題という側面が大きい。

PAPSSのマイク・オグバル最高経営責任者(CEO)は「われわれの目標は、もしかすると人々が思い浮かべる姿とは逆に、脱ドル化ではない。アフリカ経済に目を向ければ、各国は決済に使える第三者的グローバル通貨の入手に苦戦していることが分かる」と述べた。

アフリカの商業銀行は、国境をまたぐ取引の決済を円滑に進める上で、海外の金融機関、いわゆるコルレス銀行に依存するのが普通だ。これはアフリカの近隣諸国間の取引にも当てはまる。

ただそうしたコルレス銀行経由の決済は貧弱な輸送インフラといった他の要素と並んで取引コストを大幅に増大させる。国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、アフリカにおける貿易コストは、国際平均よりも50%高い。

座談会
「アフリカでビジネスをする」の理想と現実...国際協力銀行(JBIC)若手職員が語る体験談
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アルゼンチン国会、大統領の拒否権再び覆す 中間選挙

ビジネス

ボーイング、スト労働者の置き換え拡大へ 戦闘機など

ワールド

イスラエルがヨルダン川西岸で道路建設加速、「葬り去

ビジネス

イタリア、今年はEU財政赤字ルールを6年ぶり順守へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    「人類の起源」の定説が覆る大発見...100万年前の頭…
  • 5
    イスラエルのおぞましい野望「ガザ再編」は「1本の論…
  • 6
    MITの地球化学者の研究により「地球初の動物」が判明…
  • 7
    「元は恐竜だったのにね...」行動が「完全に人間化」…
  • 8
    1日1000人が「ミリオネア」に...でも豪邸もヨットも…
  • 9
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 10
    【クイズ】1位はアメリカ...世界で2番目に「航空機・…
  • 1
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 2
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 3
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 4
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 10
    虫刺されに見える? 足首の「謎の灰色の傷」の中から…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中