最新記事
インタビュー

蟹江憲史教授が国連から任命されて書いた、SDGs「2030年まであと7年」の現実と希望

2023年12月21日(木)17時25分
森田優介(ニューズウィーク日本版デジタル編集長)
慶應義塾大学 蟹江憲史

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江憲史教授。日本でSDGsの研究と実践を牽引し、9月には国連事務総長の任命を受け「持続可能な開発に関するグローバルレポート(GSDR 2023)」を共同執筆した Photo:遠藤 宏

<世界の独立科学者15人の1人として、2023年のグローバルレポートを執筆したSDGsの第一人者に聞いた。厳しい現状をまとめたレポートに込められたメッセージとは?>

「2030年」まで、あと7年――。

12月13日、中東のドバイで開かれていたCOP28(国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議)が閉幕した。焦点となったのは「化石燃料からの脱却」。世界は今、温室効果ガス排出を実質ゼロにすることを目標に掲げているが、その目標年は2050年だ。あと27年。

それに対し、気候変動だけでなく、貧困やジェンダー、教育、働き方、まちづくりまでも包括するSDGs(持続可能な開発目標)は、目標年を2030年としている。2015年に国連の全加盟国が合意し、2030年までに解決を目指す課題として、17の目標と、それらを細分化した169のターゲットが定められた。

あと27年だろうが、あと7年だろうが、これらの地球的課題への取り組みは待ったなしの状況だ。日本のSDGs研究の第一人者である蟹江憲史さんなら、現状をどう見ているだろう。

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科の蟹江教授は、国内外でSDGsや環境問題を中心に活躍中。国際研究プログラムFuture EarthのSDG Knowledge Action Network共同議長などを歴任し、日本政府のSDGs推進円卓会議構成員なども務める。

9月には国連事務総長の任命を受けた世界の独立科学者15人のうちの1人として、「持続可能な開発に関するグローバルレポート(Global Sustainable Development Report 2023、GSDR 2023)」を発表した。

ニューズウィーク日本版ではこの春、「日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく――」という考えのもと、「SDGsアワード」を立ち上げた。蟹江さんには本アワードの外部審査員を務めていただく。

11月末に行った蟹江さんへのインタビューを、前後編に分けて掲載する(この記事は前編)。

※後編はこちら:日本はSDGs浸透度「世界一」、この武器をどう使うかが次の課題だ――蟹江憲史教授

◇ ◇ ◇


――前回の「持続可能な開発に関するグローバルレポート(GSDR)」発表が2019年。それから4年が経ち、SDGsが目標年としている2030年まで残り7年という時期になる。今回GSDRをまとめるにあたって、苦労した点は?

2020年から3年かけて調査、議論をしていったが、(新型コロナウイルスの)パンデミックがあり、なかなか対面で集まることができなかった。パンデミックが終わってからも、15人の科学者の中にはロシアの方もいて、ニューヨークでのミーティングに来られなかったり。前回の2019年版では対面で議論を重ねたが、今回は半分以上がオンラインで、チームとして進める上での難しさがあった。

独立科学者15人は、地域のバランスも、性別のバランスも取れていて、年齢でも多様性がある。いろいろな国、立場の視点からSDGsの現状を見ることができたのは、非常に良い経験だった。

先端医療
手軽な早期発見を「常識」に──バイオベンチャーが10年越しで挑み続ける、がん検査革命とは
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

BMW、第2四半期販売は小幅増 中国不振を欧州がカ

ワールド

ロシアに関する重要声明、14日に発表とトランプ米大

ワールド

ルビオ長官、11日にマレーシアで中国外相と会談へ 

ワールド

UAE、産油能力を一段と拡大する可能性も=エネルギ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 6
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中