最新記事

新興国

東南アジアに迫るバブル崩壊説

リーマン・ショック後の世界経済で高成長を謳歌していた東南アジアにも、欧州と中国の失速による不安が広がり始めている

2013年8月9日(金)15時30分
トレファー・モス(ジャーナリスト)

バブルの塔 東南アジア最大のインドネシアで危機が起きれば世界が注目する Beawiharta-Reuters

 長いこと世界経済の主流から外れていた東南アジアも、今では外国人投資家によく知られた存在だ。世界金融危機の後遺症で景気が低迷している欧米諸国や、高成長の調整局面を迎えた中国やインドなどを尻目に、東南アジア諸国はここ数年、大きな成長を遂げてきた。

 東南アジアの潜在力とそれを実現する能力への信頼が深まるにつれ、成功が成功を呼ぶ好循環が始まった。インドネシアはもう少しで東南アジア初の1兆ドル経済になろうとしているし、国債の格付けも11年には14年ぶりに投資適格級に格上げされた。

 マレーシアやタイでは製造業が活況を呈し、フィリピンはIT業務などのオフショアリング先としてインドに迫ろうとしている。今年第1四半期のGDP成長率は7・8%とアジアでトップクラスだった。

 だが、すべてがうまくいっているように見えた途端、東南アジア活況の根本の部分にひびが入り始めた。ハードランディングはまだ回避可能だとエコノミストは言うが、今後2年ほどの地域経済の運命はおそらく、各国政府や中央銀行の経済政策よりも、欧州債務問題など世界の波乱要因がどうなるかに懸かっている。

 東南アジアにとってのジレンマは、経済的な成功は歓迎すべきだが、成功し過ぎは危険だということだ。

 有利な投資先がなくて運用難に苦しんでいた外国資本は最初、東南アジアの将来性に希望を見いだし投資した。だが、話がうま過ぎると気付くまでにそう時間はかからなかった。不動産価格も株価もあまりに上昇が急ピッチだった。資産バブルが始まっていたのだ。

日米の量的緩和は迷惑

 例えばフィリピン総合株価指数は今年最初の3カ月余りで26%も上昇した(その後下落)。潤沢な投資資金のおかげで庶民は低金利で金を借りることができ、消費を押し上げると同時に家計の債務を膨張させた。

 一方、力強い成長を遂げていた経済も、息切れの兆候を見せ始めてきた。東南アジアも世界的停滞と無縁ではいられなかったのだ。欧米の景気後退と中国の景気減速の結果、東南アジアの輸出は減少し、主要な輸出品目である資源の国際価格も下落した。

 今年前半には、いろいろな問題が顕在化し始めた。米調査会社IHSグローバル・インサイトのアジア担当チーフエコノミスト、ラジブ・ビスワスはとりわけ、日米の中央銀行が行っている量的金融緩和を「不安定要因」だと指摘する。

 日米の通貨当局が金融システムに供給した資金の多くは、そのまま東南アジアに流れてくる。だがこれらの資金は逃げ足も速い。東南アジア経済の先行きに対する見方が変われば、投資家はあっという間に資金を引き揚げるだろう。そうなれば、東南アジアの通貨や株式市場はなすすべもない、とビスワスは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、リスク資産反発受け 円は衆

ワールド

トランプ氏、インドへの25%追加関税撤廃 ロ産石油

ビジネス

米FRBは年内1─2回の利下げ必要=SF連銀総裁

ワールド

トランプ氏、イランとの取引国に「2次関税」 大統領
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 2
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入った「最強ライバル」の名前
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 7
    鉱物資源の安定供給を守るために必要なことは「中国…
  • 8
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 9
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 10
    「エプスタインは悪そのもの」「悪夢を見たほど」──…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 8
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 9
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 10
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中