最新記事

ビジネス

ベンチャーの主役は中高年の起業家!

The Golden Age of Innovation

起業は若者の独壇場というイメージは単なる誤解にすぎなかった。最新研究が示す「中高年起業力」のホンモノ度

2010年9月28日(火)16時02分
シュテファン・タイル(ベルリン支局)

偏見に負けず 中高年の起業家は高度な知識を備え、顧客のニーズを熟知し、協力者のネットワークを持っている Image Source/Getty Images

 ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のフェースブックをマーク・ザッカーバーグが立ち上げたのは19歳のとき。ラリー・ページとセルゲイ・ブリンがグーグルを共同開発したのは23歳のときだった。

 こうした若き起業家が有名になるにつれ、技術革新で成功する人は若くて大胆で、天才的な頭脳の持ち主というイメージが強まった。一方、中高年になると古臭い習慣にまみれ、身に付けた技能も時代遅れになり、リスクを嫌うようになるという印象を持つ人が増えた。

 これが本当なら大変なことになる。何しろ30年には、アメリカでは総人口の平均年齢が37歳から39歳に、EU(欧州連合)では40歳から45歳に、日本では45歳から49歳に上がるのだ。

 このデータとベビーブーム世代後の出生率低下を考え合わせると、先進国の多くが創造力の欠如に悩まされるのではないかと思えてくる。起業家予備軍と労働者の平均年齢が上がるなか、こうした国々は競争力を保ち、経済を成長させるのに苦労するのではないか。

 だが驚いたことに最近の研究によると、答えはノー。高齢化に関する一般的な固定観念の多くが誤っていたことが分かってきた。起業家は若いものだというイメージもその1つ。ハイテク企業の設立者の平均像は大学を卒業したばかりの天才ではない。

 成功したハイテクベンチャー549社を調査したデューク大学のビベック・ワドワー教授によれば、平均的なハイテク起業家は配偶者と子供を持ち、他人のために働くことに飽きた40歳のエンジニアかビジネスマンだ。

 さらに、起業時の年齢が高ければ高いほど成功率は高いという。中高年の起業家は高度な技術的知識を備え、顧客のニーズを熟知し、協力者のネットワークを持っているからだ。

 創造力を武器に起業を試みる年齢は前より上がっているようだ。コフマン財団のデータによると、アメリカで起業家の割合が最も高い年齢層は55〜64歳。55歳以上の人が起業を成功させる確率は、20〜34歳の人より2倍近くも高い。

ベビーブーム世代が活躍

 96年以降、35歳未満の起業率は低下しているが、他の年齢層では増加傾向が目立つ。

 どうやらベビーブーム世代が積極的に企業を設立しているようだ。コフマン財団のデーン・スタングラーは、起業ブームが起きることを期待している。新しい会社は多くの雇用を創出するから、低迷する経済に好影響を与えるはずだ。

 中高年の起業があまり話題にならないのは、地味な会社を立ち上げることが多いから。生物工学やエネルギー、IT(情報技術)機器などの分野での起業が目立つ。企業間取引が主体の場合も多く、その場合、消費者の目に触れることはほとんどない。

 フォーブス誌によると、アメリカで最も成長力の高いハイテクベンチャー企業は太陽光発電大手のファースト・ソーラー社。同社の母体は84年に68歳の発明家が設立した企業だ。2位はネットワーク関連会社のリバーベッド・テクノロジーで、創設者の設立時の年齢は51歳と33歳だった。

 インターネットさえ、もはや若者の独壇場ではない。SNS上などで提供されるソーシャルゲーム大手のジンガ・ゲーム・ネットワークの共同設立者でCEO(最高経営責任者)のマーク・ピンカスは44歳。生物工学やエネルギーのような分野では起業家の平均年齢はさらに高いと、デューク大学のワドワーはみている。

 普通の労働者の場合は年齢はどのように影響するだろうか。ドイツのある大手企業が年齢層別に品質改善への貢献度を調べたことがある。その結果、中高年労働者は手順や工程の効率化だけでなく、革新的なアイデアについても、若い労働者より貢献度が高いことが分かった。
 
 この調査に携わったドレスデン応用科学大学の経済学者ビアギット・ファーボンクによれば、調査結果が出た後、この企業は早期退職制度を段階的に廃止することにしたという。

 だが中高年は生産性や革新性の面で若者に劣るというイメージは根強い。その背景には文化的な「神話」がある。

 シカゴ大学のデービッド・ガレンソン教授は芸術と科学に関する創造力を2つに分類した。

 1つは先鋭的な新しい概念に基づく創造力で、若さがものをいう。いい例がパブロ・ピカソやアルバート・アインシュタイン。もう1つは徹底的な試行錯誤の上に築かれる創造力で、開花に時間がかかる。ポール・セザンヌやチャールズ・ダーウィンのケースだ。

 後者のタイプの創造力は、より奥が深く、未完成に終わることが多い。ガレンソンに言わせれば、中高年の「天才」が冷遇されるようになったのはそれが一因だ。

ニュース速報

ビジネス

中国、2017年は改革推進へ 需要底上げも図る方針

ワールド

韓国国会、朴大統領の弾劾訴追案を可決 与党から多く

ワールド

トルコ、大統領権限強化に向けて来年国民投票へ=副首

ビジネス

独ビルト紙、量的緩和を延長したECB総裁を批判 州

MAGAZINE

特集:THE FUTURE OF WAR 未来の戦争

2016-12・13号(12/ 6発売)

AI、ドローン、ロボット兵士......進歩する軍事技術は 新時代の戦場と戦闘の姿をここまで変える

人気ランキング

  • 1

    今がベストなタイミング、AIは電気と同じような存在になる

  • 2

    韓国「崔順実ゲート」の裏で静かに進む経済危機

  • 3

    米ルビオ議員、南シナ海の領有権問題で対中制裁法案──トランプ新政権に行動を促す

  • 4

    北朝鮮が中国への「大麻」輸出に乗り出す

  • 5

    光熱費、電車賃、預金......ぼったくりイギリスの実態

  • 6

    トランプが仕掛ける「台湾カード」 中国揺さぶりのも…

  • 7

    マドンナ、トランプに投票した女性たちに「裏切られ…

  • 8

    トランプ政権の国防を担うクールな荒くれ者

  • 9

    来週プーチン露大統領来日、北方領土への期待値下げ…

  • 10

    「トランプ劇場」に振り回される習近平

  • 1

    トランプ-蔡英文電話会談ショック「戦争はこうして始まる」

  • 2

    マドンナ、トランプに投票した女性たちに「裏切られた」

  • 3

    トランプ氏、ツイッターで中国批判 為替・南シナ海めぐり

  • 4

    今がベストなタイミング、AIは電気と同じような存在…

  • 5

    イギリス空軍、日本派遣の戦闘機を南シナ海へ 20年…

  • 6

    内モンゴル自治区の民主化団体が東京で連帯組織を結…

  • 7

    「3.9+5.1=9.0」が、どうして減点になるのか?

  • 8

    インターポールも陥落、国際機関を囲い込む中国の思惑

  • 9

    トランプ、ボーイングへのエアフォース・ワンの注文…

  • 10

    韓国「崔順実ゲート」の裏で静かに進む経済危機

  • 1

    トランプファミリーの異常な「セレブ」生活

  • 2

    「トランプ勝利」世界に広がる驚き、嘆き、叫び

  • 3

    注目は午前10時のフロリダ、米大統領選の結果は何時に分かる?

  • 4

    68年ぶりの超特大スーパームーン、11月14日に:気に…

  • 5

    米大統領選、クリントンはまだ勝つ可能性がある──専…

  • 6

    トランプ勝利で日本はどうなる? 安保政策は発言通…

  • 7

    【敗戦の辞】トランプに完敗したメディアの「驕り」

  • 8

    安倍トランプ会談、トランプは本当に「信頼できる指…

  • 9

    「ハン・ソロとレイア姫」の不倫を女優本人が暴露

  • 10

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

日本再発見 「五輪に向けて…外国人の本音を聞く」
リクルート
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

『ハリー・ポッター』魔法と冒険の20年

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2016年12月
  • 2016年11月
  • 2016年10月
  • 2016年9月
  • 2016年8月
  • 2016年7月