最新記事

テクノロジー

グーグル、クラウドで官需に殴り込み

ロス市警にダメを出された挫折から素早く立ち直り、マイクロソフトの強力なライバルに

2010年7月28日(水)16時26分
クリス・トンプソン

 グーグルは、ロサンゼルス市政府にグーグル・アップスの導入をすませるはずだった6月30日の納期を守れなかった。グーグル・アップスはネット上でメールや文書管理などのソフトを提供するクラウドベースのサービスだが、極秘の捜査情報を扱うロサンゼルス市警がセキュリティ上の懸念を示し、それに応えられなかったためだ。

 この不名誉な事実をグーグルが渋々と認めたのがつい昨日のこと。ところが早くも今日は、納期遅れの原因となったセキュリティ上の問題を解決する新製品の投入で反転攻勢に出た。

 グーグルが7月27日に発表した「グーグル・アップス・フォー・ガバメント」は、企業向けのパッケージと大差ないが、セキュリティを強化した。具体的には、公共部門の顧客のデータを蓄積するサーバーを民間企業向けのサーバーと切り離した。政府の機密情報が、セキュリティの弱いクラウド上のデータに紛れ込むことはないと保証するためだ。グーグル幹部は、サーバーがどこにあるかも明かさない。「アメリカ本土のどこか」の秘密の場所にある、と言うだけだ。

「通行手形」のFISMA認定を取得

 連邦政府はこうした対策に満足したようだ。グーグルは政府向けグーグル・アップスの発表と同時に、同製品がIT事業者の垂涎の的である「連邦情報セキュリティマネジメント法(FISMA)」の認定を得たと発表した。極秘情報や非公開情報を扱う連邦政府機関の仕事を受注するには不可欠の認定だ。

 グーグルは長いこと、連邦政府機関の購買やIT投資を一手に扱う連邦一般調達局(GSA)の契約を獲得するためマイクロソフトと競争してきた。GSAの仕事を受注した企業には政府の他の機関からも注文が殺到する可能性が高く、大きな収益源になる。FISMAの認定を得た今、この重要な受注合戦でグーグルは突如強力なライバルにのし上がったわけだ。

 ほんの24時間前グーグルは、同社のアプリケーションがロス市警の捜査資料を扱うには実力不足という烙印を押されたことについて、しどろもどろの釈明を強いられていた。一夜にして、すごい逆転である。

The Big Money.com特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中