コラム

アクティヴィストを自称する「インスタグラムの王」

2016年12月29日(木)11時00分

December 22, 2016 Front Page The question was asked by an editor, "Why is it that you go to conflict spaces and bring back images that do not look like what everyone expects them to say?" -- I am paraphrasing here. My answer was something like this, "When I turn up on any assignment, I photograph what I see first. If I see the dad I photograph him. If I see the brother, the uncle, the hardworking breadwinner, I photograph those too. And if by chance the gangster turns up, I photograph him too. I do not go to an assignment with preconceived ideas of what the image is going to look like. A few months ago I had the honour of working with John Eligon @johneligon on a story for the New York Times @nytimes men caught up in both poverty and crime and looking for ways to leave both behind. In this picture Antwine White Aka "Weedy" shows off one of his many scars after being cornered and shot up by rival gang members. The father of 3 year old Aidan was poised, reflective and insightful. His expectations for his son were devoid of the lifestyle he was raised in, however, after getting shot the last time, "Weedy" asked his fellow gang members not to seek revenge as he was willing to try a new way of life for his son. #chicagoportrait #whenlivingisaprotest #streetphotography #streetportrait #makeportrait #makeportraits #leicamp

"Humanist/Activist."さん(@ruddyroye)が投稿した写真 -

アサイメント(撮影依頼)を出したニューヨーク・タイムズ紙の意向に反して、自分の思うように撮ったシカゴの犯罪と貧困のポートレイト。キャプションには「ライバルのギャングに撃たれたが、息子の将来のために、復讐しないよう仲間に求めた父親」と書かれている

 100パーセント同意はできないが、取材に偏見を入れない限り、事実に基づいて作品そのもので自らの信念を語るなら、彼の言うことは確実に一理ある。とりわけSNSの時代に入ってから認められ始めている考え方だ。ジャーナリズムとアクティヴィズムの垣根はあやふやになり、オーバラップするものがかなり増えてきている。

 たとえば、アメリカで頻繁に起こっている、警察官によるまったく非武装の無実の黒人射殺事件の取材。そうした事件は単なる事故や過失の範囲を明らかに超えている。人口比を考慮すれば、白人に対する事件より7倍も多い。だが、今まではこの問題が深く取り上げられることはあまりなかった。あったとしてもすぐに忘れられ続けてきた。ローイはこれらの事件に対して、単に取材しドキュメントするのではなく、"沈黙すべきではない"という明白なメッセージを付け加えて発信しているのだ。

【参考記事】人種分断と銃蔓延に苦悩するアメリカ

 実のところ、彼が活動家であろうがなかろうが、彼の作品を総合的に判断すれば――つまり、写真、キャプション、コメント欄に浮かび上がるテキストを1つのインスタレーション・マルチメディアとしてみるならば――彼の作品は、前代未聞ともいえる偉大な域にある。

 キャプションの多くは、写真の説明としては、例外とも言えるほど非常に長い。だが物語や、被写体に対する彼のアプローチや哲学、信念がしばしば詩的に書かれ、それが自然と心の琴線に触れるのだ。またコメント欄は、それにも増して異彩を放っている。ローイとオーディエンス、あるいはオーディエンス同士が、生のメッセージを吐きあって相互のリアクションを生み出す。他のソーシャルメディアとは比較できないほどのスピードと質を伴って拡散・拡大していき、1つの巨大な生き物のような社会的・政治的アートにもなっているのである。

 むろん、それはインスタグラムというプラットホームが持つシンプルさとスピード、時代性がマッチして生み出されたものだ。しかし、それ以上にローイのとてつもないマルチ感覚と能力の所以なのである。そしてその核は、彼のプロジェクトのタイトル"When Living is a Protest"が示しているように、彼自身の生きざまが抗議の証しになっているということでもあるのだ。

今回ご紹介したInstagramフォトグラファー:
Ruddy Roye @ruddyroye

大雪のニューヨーク、教会に行こうとしている足の不自由な女性を手助けする見知らぬ人

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ダライ・ラマ「一介の仏教僧」として使命に注力、90

ワールド

BRICS財務相、IMF改革訴え 途上国の発言力強

ワールド

英外相がシリア訪問、人道援助や復興へ9450万ポン

ワールド

ガザで米国人援助スタッフ2人負傷、米政府がハマス非
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 8
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story