コラム

日本経済低迷の主因である「空洞化」をなぜ総選挙で議論しないのか

2026年02月04日(水)14時15分

本来であれば、空洞化した分を、より高度で付加価値の高い産業にシフトして成長を続けることができなかった、そのことの検証と責任追及も必要です。ですが、多国籍化した大企業の場合は、そうした高付加価値の部分は海外でやっているので、切迫感はありません。日本の教育やインフラに大きな問題があっても、改革の旗を振る困難を背負うよりは、海外で進めたほうが合理的、そのような判断の方が多そうです。

政治にも問題があります。日本型の保守というのは、産業界は重視しますが、同時に国内の保守票に支えられています。保守票は国内の改革には反対しますから、国内の改革をしないで経済界が潤うような空洞化はむしろ推進してしまう結果になります。つまり日本型の保守イデオロギーというのは、空洞化との相性がいいのです。


一方で日本型のリベラル派は、そもそも組合を組織票にしていたり、社会主義的な発想法が残っていたりして、民間企業の活動にはフレンドリーではありません。更に、支持層が高齢化して年金生活に入る現状では「経済成長を進めると社会が変わってしまう」などといって、大規模イベントに反対するなど別の意味で超守旧派になっています。

日本社会は40年間、我慢強く耐えてきた

人類史上珍しい長期にわたる衰退を続けたということは、言い換えれば、社会全体が間違った考え方に対して40年近く我慢強く耐えてきたということです。コンピュータは(システム、制度、データの)標準化を伴わないのでDXが負荷の上乗せになってしまう、世界の共通言語は英語なのに使える英語教育ができない、先端技術への投資が官民でどんどん細るなど、40年間よくもまあ間違ったことを続けてきたのだと思います。

空洞化がここまで進んだのも、国内が変われなかったことの結果であるとも言えます。その意味で、今ようやく強い現状不満の感情が芽生えてきた、そのことは一種の覚醒として評価してもいいのかもしれません。

こうなったら、幕末の志士たちが、排外テロリストから開国と近代化へと180度方向転換した先例に学ぶべきです。つまり、非連続的な発想の転換によってポピュリズム的なエネルギーを正しい方向に向けることは可能なはずです。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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