コラム

ようやく終わる日本の「コロナ鎖国」に反省はないのか?

2022年09月28日(水)11時30分

私は当局には悪意はないと思います。ただ、法令と前例に縛られていただけだと思います。これに一部のごく少数のネット世論が声高に叫んでいた「島国の特質を活かした水際対策を」という意見を必要以上に恐れていた、その結果であることは想像できます。

ですが、今回の「鎖国」により日本の国としての信用が失われた、特に非常時に合理的な判断ができない硬直した制度を持った国というイメージが確立したのは間違いないでしょう。平時には「パスポートの滑りが良い」などと言われていた日本ですが、これでは「多国籍企業がアジアの本部機構を置く」立地としては、リスクが大きすぎるということになると思います。当然のことながら、対日投資意欲も減退するのは間違いありません。

それ以前の問題として、今回の鎖国で多くの日本人を含む在外の家族が、あるいは窓口となった在外公館や航空会社が、想像を絶する苦痛を被ったことに関しては、このままで済ませてはならないと思います。加藤厚労相には、一連の関係者に対する真摯な謝罪と、強毒性が疑われる感染症でない限り、このような効果の薄い水際対策は将来的に自動的には行なわないという表明をお願いしたいと思います。

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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