コラム

トランプがバイデンに与えてしまった「必殺技」...最高裁判決で無限の権力を手中に?

2024年08月06日(火)14時22分

最高裁判決で免責を受けたことで、反対意見書で危惧されていたシナリオを実現させたという荒唐無稽な主張だ。もちろん僕はそんなことは信じない。そもそもバイデンのシナリオライターはソトマイヨールではなく、僕だからね。

とにかく、えぐすぎるから暗殺は忘れよう。暴力以外にも「公的な行為」としてできることは沢山ある。

例えば、大統領は行政府の長なので、財務省を通じて政府の予算を使うのも仕事だ。トランプ当選を防ぐため、与党民主党のカマラ・ハリス陣営にお金を大量に回すこともできるはず。選挙CMを大量に制作して放送できる!税金で!

そういえば、放送・通信を管轄する米連邦通信委員会(FCC)も行政府に属する機関だ。公共の電波はバイデンの手中にある。

トランプのCMを流さないようにすることも、保守派大手のFOXニュースの放送認可を取り消すことも可能だ。トランプ派のスローガン「MAGA」を放送禁止用語に設定できる!そうなれば逆に反抗期の若者は口に出したくなるだろうけど。

不正な捜査も免責?


なんだったら、司法省も大統領の管轄。トランプもその側近も、邪魔してくるヤツを逮捕させることもできる!やろうと思えば、トランプ支持者を全員捕まえて、国外に追放することができる。不法移民全員をそうすると、トランプ本人が公約しているぐらい、国外追放はれっきとした「公的行為」だ。

ここで、このコラムを読んでいるバイデンは「ドワハハハハ!」と、高笑いし始めていることだろう。映画『アラジン』の最後に、悪党のジャファーが無限の力を手に入れ、巨人化していくシーンを思い出してください。あんな感じだ。

もちろん、上記のような権力乱用は法律違反であって、憲法違反でもある。公的な行為でも、権限を不正な目的で利用した場合、横領、背任、人権侵害などの犯罪に当たり、犯人は取り締まられてしかるべきだ。本来は。

だが最高裁の判決によると、その犯人が大統領である場合「目的」も審査することができない!

判決文の中で「たとえ捜査がでっち上げであったり、不正な目的で行われたりしたとしても、それは司法省の捜査や起訴機能に対する大統領の独占的権限を奪うものではない」と指摘。大統領が行政府をどう利用しても「絶対的な免責」があると、はっきりと結論付けている。

どんな悪業でも「公的な行為」であれば罪に問われないのだ。しかも、トランプを止めるのはむしろ善行でしょう、バイデンさん?

おそらくいくつかの疑問が浮かんでいることでしょう。それにも答えておこう。

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

マイクロソフト、7─9月に過去最高の300億ドル支

ワールド

韓国との貿易協定に合意、相互関税15% トランプ米

ワールド

カナダもパレスチナ国家承認の意向表明、イスラエル反

ビジネス

FRB、5会合連続で金利据え置き トランプ氏任命の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 4
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 5
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 6
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 9
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 10
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story