コラム

盛り土は気になるけど、北方領土もね!

2016年09月29日(木)18時00分

 ・・・次に、目的を成し遂げるための手段、例えば、北方領土の返還を実現させるために何ができるのか、"全ての"選択肢を挙げてみよう:

 1)武力。極端だが、戦争をする選択肢はある。現憲法でできないなら、憲法を改正して戦争をすることや武力的な威嚇をする。
 2)経済的、外交的な圧力。非軍事的手段として経済制裁、国際裁判への告訴、国連の決議案などが考えられる。
 3)経済的、外交的な協力。天然ガスの長期輸入契約や日露の企業連携などの約束をし、島の返還を成す。
 4)購入や土地の取引。アメリカはロシアからアラスカを購入したこともあるし、中国とロシアは土地を交換して領土問題を解決したこともある。今回プーチン大統領は「取引はしない」と言っているが、選択肢としてあるはず。
 5)その他

 さて、意見交換を始めよう。あなたが考える、目指すべき目的と使うべき手段を教えてください。どうぞ。

 ・・・う~ん、聞こえてこないな~。

 当然のことだ。パソコンに向かって叫んでいる人なんていないだろうし、叫んでも聞こえるはずがない。でも、僕が言っているのは、違う話。

 読者のみなさんのように、国民も各々意見を持っているはずなのに、23年以上日本で暮らしている僕は、北方領土について議論をしている人をほとんど見たことがない。「北方領土は日本固有の地、返還されて当然だ!」という意見はよく聞くし、よく理解しているつもり。ただ、少数派でも「北方領土はいらない。変換してもらうための努力を他に回すべき」という意見がたまに聞こえてきてもおかしくないはずなのに、それは聞こえてこない。

 日本は和を尊ぶ国だからか、国民同士は反対意見を述べたがらないようだ。でも、異なる意見がないと議論が始まらない。議論がないと主張の正しさを精査できないし、考え方を鍛えられない。みんな、ちょっと空気を読みすぎてるんじゃないかな?

 そこで、空気を読まないアメリカ人として、議論の材料を提供させていただきたい。これから北方領土に関する質問をいくつか挙げる。それぞれに対して、複数の回答案を出すけど、大事なのはあなた自身の答え。ぜひ考えながらお読みください。

 では行ってみよう!

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

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