コラム

インフルエンザは同性の友達にご用心

2011年02月08日(火)11時55分

 先日、5歳の息子がインフルエンザを発症した。家族旅行の最中というまずいタイミングだったので、「どうか下の娘にはうつりませんように」と必死で念じていると、「朗報」が目に入った。

 アメリカの小学校でインフルエンザウイルスの感染経路を詳細に追跡調査した結果、男の子は男の子から、女の子は女の子から感染する確率が、異性間の感染の3倍も高いことがわかったというのだ。これが事実なら、我が家の場合も兄から妹には感染しないかも?!

 期待を胸に、米国科学アカデミー紀要オンライン版に発表された論文を見てみると、ウイルス自体に男女どちらかにだけ感染する特性があるという話ではないようだ。新型インフルエンザが世界的に大流行した09年春、米疾病対策センター(CDC)などの研究チームがペンシルベニア州の小学校の児童370人の感染拡大状況をリアルタイムで観察。発症の正確な日時と教室での席順、学校内外で参加した活動、スクールバスの乗車状況などを照らし合わせたところ、子供たちの「ソーシャルネットワーク」が果たす役割の大きさが浮かびあがったという。
 
 同じクラス内での感染が、同学年の他のクラスからの感染の5倍に達するというのは予想通りだが、意外なことに、教室で近くの席に座っているからといって罹患率が高まるわけではないという。席順よりもずっと大きな要因は、子供たちの人間関係。それも、地域コミュニティーでの接触が、学校内に匹敵する重要な感染経路となっていた。校内でも校外でも、男女とも同性の友人と過ごす時間が異性と遊ぶ時間の4倍多かったため、結果的に、男の子は男の子から、女の子は女の子から感染するケースが圧倒的に多くなるようだ。

 ちなみに、我が家では娘は感染を免れたようで、次は親の番か・・・と戦々恐々としているところ。だが、望みはある。同じ研究チームの調査によれば、家庭内での感染率は予想外に低く、インフルエンザに感染した親のうち、我が子から感染したケースは2割程度だという。大人のインフルエンザは主に大人から・・・。皆さんもどうぞご注意を。

──編集部・井口景子
このブログの他の記事も読む

プロフィール

ニューズウィーク日本版編集部

ニューズウィーク日本版は1986年に創刊。世界情勢からビジネス、カルチャーまで、日本メディアにはないワールドワイドな視点でニュースを読み解きます。編集部ブログでは編集部員の声をお届けします。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシアとの戦争、2カ月以内に重大局面 ウクライナ司

ビジネス

中国CPI、3月は0.3%上昇 3カ月連続プラスで

ワールド

イスラエル、米兵器使用で国際法違反の疑い 米政権が

ワールド

北朝鮮の金総書記、ロケット砲試射視察 今年から配備
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    ウクライナの水上攻撃ドローン「マグラV5」がロシア軍の上陸艇を撃破...夜間攻撃の一部始終

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 6

    「未来の女王」ベルギー・エリザベート王女がハーバー…

  • 7

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 8

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 9

    礼拝中の牧師を真正面から「銃撃」した男を逮捕...そ…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story