最新記事
がん

1990年以降、50歳未満で発症するがんが世界中で増えている 

2022年9月12日(月)17時55分
松岡由希子

食事や生活習慣が早期発症型がんの増加につながっている...... simonkr-iStock

<研究によると、50歳未満で発症する早期発症型がんが1990年頃から世界中で顕著に増えていることがわかった......>

1990年以降、50歳未満で発症する早期発症型がんが世界的に増えていることが明らかとなった。その研究成果は学術雑誌「ネイチャーレビュースクリニカルオンコロジー」に掲載されている。

50歳未満で発症するがんが世界中で増えている

米ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院(BWH)の研究チームは、2000年から2012年までに50歳未満で発症率が上昇した乳がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん、肝外胆管がん、胆のうがん、頭頚部がん、腎臓がん、肝臓がん、すい臓がん、骨髄がん、前立腺がん、胃がん、甲状腺がんを対象にデータを分析した。

その結果、50歳未満で発症する早期発症型がんが1990年頃から世界中で顕著に増えていることがわかった。出生年が遅い人ほど発症リスクが高くなり、たとえば、1960年生まれの人は1950年生まれの人よりも50歳未満でがんを発症するリスクが高くなっている。また、50歳以降に発症する晩期発症型がんの発症率は1950年代から上昇し始めているが、早期発症型がんの発症率の上昇は1990年代前半までみられない。

がんの種類によっては、がん検診による早期発見が早期発症型がんの発症率の上昇につながった可能性も否定できないが、早期発症型がんが実際に増えている種もあるとみられる。

食事や生活習慣が早期発症型がんの増加につながっている

研究チームは、人々の食事や生活習慣、体重、環境曝露、微生物叢(マイクロバイオーム)がこの数十年で大きく変化していることに着目し、「西洋化した食事や生活習慣が早期発症型がんの増加につながっているのではないか」との仮説を示している。

早期発症型がんの危険因子として、飲酒、喫煙、肥満、加工度の高い食品の摂取、睡眠不足などが挙げられている。加工度の高い食品や加糖飲料の摂取、飲酒、運動不足で座りっぱなしの生活、肥満、2型糖尿病は1950年代以降に著しく増えており、これらに伴って微生物叢の変化している可能性がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 9
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 10
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中