コラム

大卒内定率「過去最高77%」に潜むミスマッチ 見逃せない「53.1%」

2018年12月04日(火)12時00分

d_morita-iStock.

<10月1日時点の大卒予定者の就職内定率は、77%で過去最高。だがその一方で、憂慮すべき調査結果も発表された。売り手市場で学生は真摯さを失い、企業は必死に自社を良く見せようとしている>

厚生労働省と文部科学省が共同で調査している平成31(2019)年3月大学等卒業予定者の、10月1日時点の就職内定状況が11月16日に発表になった。10月1日といえば、多くの企業で内定式が行われた日だ。

大学生の就職内定率は77.0%(前年同期比1.8ポイント上昇)となり、平成9(1997)年3月卒の調査開始以降、同時期で過去最高となった。23%の学生はまだ決まっていないとはいえ、多くの学生が10月1日に勇んで内定式に臨んだことだろう。

内定率77.0%という状況下で行われた内定式。その成否は来年4月以降に問われる。なぜなら、内定式がゴールではなく、社会人スタート後こそ大切だからだ。

あなたの会社の新入社員にもいる「隠れ就活生」

10月14日には、もうひとつ、面白い調査結果が発表された。新卒学生向け就職サイト「マイナビ」の運営等を行っている株式会社マイナビが、今年9月時点で「マイナビ2019」に登録している既卒者に対し、在学中の活動状況や、現状の行動や内定率などの活動実態を調査したのだ。

つまり、今年と同じように売り手市場だった昨年に就職活動をして、今春に大学を卒業したにもかかわらず、2019年卒向けの就職サイトを使っている人たちへの実態調査だ。

もちろん、就職先が決まらずに卒業した人もいるので、既卒者が登録していること自体は珍しいことではないが、何とそのうちの53.1%が、昨年度の就職活動で内定をもらっているのだ。

その在学中の内定獲得者に対して、在学中に内定を獲得していたにもかかわらず現在就職活動を行っている事情について聞くと、「一度就職したが、退職もしくは在職しながら再度就職活動を行っている」が54.1%と5割を超えている。特に、文系男子は59.5%と割合が高い。

内定をもらい、卒業して入社。しかし、すぐに次の会社を探す。何とも残念な話である。現職場が向いていないことが分かったので、それに価値があったといえなくもないが、もっと早く分かっていれば、もっと前向きな価値を生み出せたはずだ。

就職してすぐに就職活動をしている人たちの反省は、「自己分析が不十分だった(自分のやりたいことやできることがよく分からなかった)」(51.3%)がトップ、「業界研究・企業研究が不十分だった(行きたい業界・企業が見つけられなかった)」(40.7%)が続いている。「自己分析」や「業界研究」の不十分さがミスマッチに繋がったと考えているようだ。

就職活動の「自己分析」「業界研究」を抜本的に見直すべき

筆者がかつてリクルート社で就職ジャーナルの編集をしていた頃、本人の就職満足度が高く、企業も採用満足度が高い学生を大勢インタビューして、他の学生との違いを見つけ出そうとしたことがある。

違いのひとつは、学生生活の早い段階で社会人との接点があることだった。

プロフィール

松岡保昌

株式会社モチベーションジャパン代表取締役社長。
人の気持ちや心の動きを重視し、心理面からアプローチする経営コンサルタント。国家資格1級キャリアコンサルティング技能士の資格も持ち、キャリアコンサルタントの育成にも力を入れている。リクルート時代は、「就職ジャーナル」「works」の編集や組織人事コンサルタントとして活躍。ファーストリテイリングでは、執行役員人事総務部長として同社の急成長を人事戦略面から支え、その後、執行役員マーケティング&コミュニケーション部長として広報・宣伝のあり方を見直す。ソフトバンクでは、ブランド戦略室長、福岡ソフトバンクホークスマーケティング代表取締役、福岡ソフトバンクホークス取締役などを担当。AFPBB NEWS編集長としてニュースサイトの立ち上げも行う。現在は独立し、多くの企業の顧問やアドバイザーを務める。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮ハッカー集団、韓国防衛企業狙い撃ち データ奪

ワールド

アジア、昨年は気候関連災害で世界で最も大きな被害=

ワールド

インド4月総合PMI速報値は62.2、14年ぶり高

ビジネス

3月のスーパー販売額は前年比9.3%増=日本チェー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story