<アマゾンは顧客第一主義を行動指針とし、人事制度「OKR」や「1 on 1」を掲げるグーグルは社員の働きやすさに重点を置く。だが、グーグルのシュミットの著書には「ベゾスのピザ2枚のルール」への言及もあり、共通する部分も>

「世界で最も働きやすい会社」に「地球上で最も顧客第一主義の会社」――。グーグルとアマゾンにおける最も重要な社員の行動原理を分析してみると、このような構図が見えてくる。

筆者が団長を務めたイスラエル国費招聘リーダーシッププログラムのメンバーであり、グーグルに勤務したことのある女性起業家によれば、グーグルでは「社員が働きやすい」ということに経営陣や管理職が大きな力を割いていたという。

それに対して、アマゾンジャパンの初期の経営陣の1人であり、アマゾンのCEOであるジェフ・ベゾスとも一緒に働いたことのある知人は、顧客第一主義が同社の最も重要な行動指針になっていたと語っている。

本稿では、筆者の新刊『アマゾンが描く2022年の世界――すべての業界を震撼させる「ベゾスの大戦略」』(PHPビジネス新書)の第5章「アマゾン、驚異のリーダーシップ&マネジメント」から内容を抜粋し、グーグルとアマゾンの相違点をリーダーシップ&マネジメントの視点から論じてみることにしたい。

AIを駆使していても、人と人との対話が重要

グーグルは、近年日本においても「OKR」×「1 on 1」など同社独自の人事制度がIT企業を中心に採用されており、「リーダーシップ×マネジメント」のあり方についても注目されている企業である。

OKRとは、Objective and Key Results(目標と主な結果)の略称であり、全社・セクション・個人で高い一貫性をもって高速でPDCAサイクルを回していく仕組みである。

1 on 1とは、1対1のミーティングのことであるが、グーグルや同社を参考にしているIT企業では、上司が部下を成長させるコミュニケーションの手法として活用されている。その本質は対話することであり、上司が管理者である自分のために行うのではなく、あくまでも部下を育成する目的で行うことが最大の特徴である。

グーグルの人事責任者であるラズロ・ボック氏が書いた『ワーク・ルールズ!』(東洋経済新報社)は、同社の採用・育成・評価の内容が明らかにされているという意味でも参考図書にすべき1冊だ。同書には、「つねに発展的な対話を心がけ、安心と生産性につなげていく」「(上司は部下に)あなたがもっと成功するために、私はどんな手助けができるかという心がけで向き合う」「目標を達成する過程で発展的な対話を促す」「発展的な対話とパフォーマンスのマネジメントを混同しない」などと記されている。

その一方で、採用・育成・評価というグーグルの「ピープル・オペレーションズ」においては、人事に関する膨大なデータが分析されている。主観ではなくデータに基づいて判断するということが人事の要諦として強調されているのがこの本の特徴の1つでもある。「人事ビッグデータ×AI」が駆使されている一方で、発展的な対話が重視されていることに着目すべきだろう。

冒頭で紹介したグーグル勤務経験のある女性起業家は、現在経営する会社においてもグーグル時代と同様に社内での対話を重視し、それが経営の生命線になっていると語っている。「AIの王者」と目されている企業においては、人事ビッグデータ×AIを駆使したあとで、人が最もすべき仕事は人と人との対話であると考えているのだ。

「カオスこそが理想の状態」