コラム

中国人を狙った「AV風俗詐欺」横行、五輪までに合法・管理化を!

2017年03月07日(火)11時15分

パンフレットには次のようなうたい文句がある。

「寂しい夜に付き添ってくれたハードディスク女神たち。手が触れられそうなほど近くにいるのにパソコンのスクリーンに阻まれて近づけない、永遠の片思いを続けるのですか。あの寒々しいパソコンのスクリーンをたたき壊し、日本という天国へ向かいましょう」

これを読んだ中国の中年男性は、P2Pソフトを駆使して海賊版AVを収集し続けていた若き日を思いだし、ついつい「今ならば俺も......」と心が揺らいでしまうという寸法だ。

実際にある「AV女優詐欺」の手口

パンフレットのツアーが実在していようといまいと、問題は「東京に行けばAV女優に会えるかも」というスケベ心につけこんだ詐欺が現に横行していること。それも嘆かわしいことに我がお膝元、歌舞伎町でである。

その手口は以下のとおり。

中国人観光客が歌舞伎町をぶらついていると、日本人の客引きに声をかけられる。日本語がわからないので戸惑っていると、客引きは「あ、中国の方ですね。少し待っていてください」と今度は中国人の客引きを連れてくる。

情けない話だが、最初から中国人の客引きが出てくれば、中国人は詐欺の確率が高いと警戒する。ところがまず日本人の客引きが相手することで、「日本人向けのサービスなのか。日本人ならば信頼できるのでは」と、ころっとだまされてしまうのだ。

中国人客引きは、こんなサービスがある、あんな店もあると列挙していくが、最後に小声で「実はAV女優が相手してくれるデリヘルがあるんですが......」と持ちかけてくる。相場は20万~30万円。

せっかく日本にやってきて、あこがれのAV女優にお相手いただけるならばと大枚をはたいてしまう人も少なくない。コンビニでは24時間ATMが稼働しているため、いつでも現金を引き出せてしまうことも被害を拡大させる要因となっている。

交渉がまとまり前金を払えば、後はホテルであこがれのAV女優がやってくるのを待つだけ。ところが女性はなかなかやってこない。約束の時間も終わりかけという時になってようやくドアがノックされる。

ついに来た!と喜び勇んでドアを開けると、なんとそこには自分の親よりも年上のような、ご高齢の女性の姿がある。文句をいってもその熟年女性は中国語がわからないので馬耳東風である。しばらく文句を言い続けていると、約束の時間が終わってしまい女性は立ち去ってしまう。

――というのが詐欺の一部始終である。

警察に訴えるなど大事にすれば、中国にいる家族にばれて大問題となってしまう。悔しいが泣き寝入りするしかないわけだ。なかには私のところに駆け込んできて、「取り返してくれたら、手数料として半分あげるから」などと頼んでくるものもいるが、いくら私が事情通とはいえ警察ではないので、どうもしてあげることはできない。

【参考記事】中国人観光客残酷物語

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今

ワールド

APEC首脳会議、共同宣言採択し閉幕 多国間主義や
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story