コラム

【英ブレグジット】メイ首相が辞任しても離脱の難題は変わらず 新首相に求められることは

2019年05月27日(月)13時05分

EU残留派ではジェレミー・ハント外相の名前が出ている。

最後までメイ首相とEUの離脱協定案を支持し続けた、国際開発担当大臣ローリー・スチュワート、サジド・ジャビド内相も立候補すると言われている。
参考:BBCニュースBBCによる立候補予定者のリスト

未解決の大きな問題=ブレグジット

英国の多くの識者同様、筆者も、メイ首相が辞任することになって、ほっとしている。

なぜかというと、メイ首相はこれまでに3回否決された離脱協定案をさらにまた下院に採決に出そうとしており、このままでは「採決に出す→否決される→時を稼ぐ→ちょっと変えて、また同じ法案を出す・・・」というパターンの繰り返しになって、先に進めないからだ。

離脱予定日の10月31日(当初は3月29日だった)になって、また「延長」をEU側にお願いする羽目に陥るかもしれない。

決まらない状態が続くことで、国民生活の上でも、ビジネス面にも影響が出る。

国内は離脱派と残留派で真っ二つに分かれており、歩み寄りの気配はほとんどない。

ここで心機一転、物事を先に進めるために新たな政治の指導者が必要となっていた。

ブレグジットの選択肢は

メイ首相が官邸を去った後も、残された道は3つしかない。

(1)政府案となる離脱協定案を可決させる(これまでに、下院が3回否決)。

(2)どうやって離脱するかという合意なしに、離脱する(「合意なき離脱」)。これは離脱強硬派が支持しているが、下院では否決。

(3)離脱をしない(離脱の決定を取り消す)。

この中で、(1)は、何らかの修正を加えないと、可決されないだろう。

しかし、一体どんな修正をするべきなのか?下院の意見はバラバラで、一つにまとまっていないのである。

また、あえて太字にすると、「EU側は協定案の再交渉を一切拒否している」

(2)については、先に書いたが、下院では否決されている。

(3)は、もしそうなれば、離脱票を無視することになり、「民主主義を冒とくした」とされて、全国的にデモが発生するだろう(暴動が起きるという人もいる)。

さて、新たな首相はこの中のどれを選択するだろう?

危ういのは、例えばジョンソンやほかの離脱強硬派(ラーブなど)が、「EUと再度交渉する」、あるいは「合意なき離脱でもいい」と言っている点だ。

まず、後者の「合意なき離脱」の場合、生活やビジネス面に多大な負の影響が出ると言われている。下院ではすでにこの選択肢は否決された。

プロフィール

小林恭子

在英ジャーナリスト。英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。『英国公文書の世界史──一次資料の宝石箱』、『フィナンシャル・タイムズの実力』、『英国メディア史』。共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数
Twitter: @ginkokobayashi、Facebook https://www.facebook.com/ginko.kobayashi.5

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フィリピン、南シナ海巡る合意否定 「中国のプロパガ

ビジネス

中国、日本の輸出規制案は通常貿易に悪影響 「企業の

ビジネス

中国不動産株が急伸、党中央政治局が政策緩和討議との

ビジネス

豪BHP、英アングロへの買収提案の改善検討=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story