コラム

ワクチン接種後、自己免疫疾患で急死した産科医の妻の訴え「夫の死を無駄にしないで」【コロナ緊急連載】

2021年01月14日(木)15時50分
ワクチン接種を受けるバイデン米大統領

世界の指導者は、新型コロナワクチンへの不安を和らげるため率先して接種を受けている(写真は1月11日、アメリカのバイデン次期大統領) Tom Brenner-REUTERS

[ロンドン発]世界中で9200万人以上が感染、197万4200人超が犠牲になったコロナ危機。統計サイト「データで見た私たちの世界(Our World in Data)」によると中国1千万人、アメリカ933万人、イギリス284万人、イスラエル193万人など合わせて2946万人が1回目のワクチン接種を終えた。

パンデミックに対する大規模な集団予防接種にはハイリスクグループの「個人防衛」や、それ以上感染が広がらない集団免疫の獲得など「社会防衛」のベネフィットもあるが、未知のリスクも伴う。

「ワクチンには副反応があることをみんな知っておくべきだと私は信じます。すべての人にとって必ずしも良いこととは限りません。美しい人生、完璧な家族を破壊し、地域の多くの人々に影響を与えることが起こり得ることを知っておくべきです。彼の死を無駄にしないで。これをニュースにして、より多くの命を救って下さい」

米フロリダ州マイアミ・ビーチのマウントシナイ医療センターで働いていた産婦人科医グレゴリー・マイケルさん(56)は昨年12月18日、米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンを接種した。3日後、手足に点状出血が見られ、集中治療室に運び込まれた。

husband310114.jpg
産婦人科医グレゴリー・マイケルさん(ハイディ・ネッケルマンさんのFBより)

血液検査で、通常大人で1マイクロリットル当たり15万~45万個ある血小板数がゼロになっていた。専門医チームが2週間、懸命の治療に当たったが、血小板数は元に戻らなかった。マイケルさんは意識もあり、元気だったが、最後の手術が行われる2日前、血小板不足から出血性脳卒中を起こし、息を引き取った。

「彼は自らワクチン接種に志願した」

妻のハイディ・ネッケルマンさんはフェイスブックに次のように投稿した。

「ワクチン接種の副反応で急性免疫性血小板減少症(ITP)を起こしたと診断された。彼はワクチン支持者だったので、自ら志願して接種した。地域のすべての人に愛され、何百人もの健康な赤ちゃんの出産に立ち会い、パンデミックの間も疲れを知らずに働いていた」

ファイザーは米紙ニューヨーク・タイムズに「調査しているが現時点でワクチンに直接関係があるとは思わない」とコメントした。

アメリカでは集団予防接種で重度のアレルギー反応であるアナフィラキシーが29例、そのほか腕の痛み、倦怠感、頭痛、発熱が報告されている。しかし急性ITPによる死者は初めて。米疾病予防管理センター(CDC)も調査を始めた。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

上昇続く長期金利、「常態」とは判断できず=安達日銀

ビジネス

アングル:企業の保守的予想が株高抑制、上振れ「常連

ビジネス

IMF、24・25年中国GDP予想を上方修正 堅調

ワールド

タイ当局、タクシン元首相を不敬罪で起訴へ 王室侮辱
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 2

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 3

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 4

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 7

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 10

    「天国に一番近い島」で起きた暴動、フランスがニュ…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story