コラム

韓国「グローバル中枢国家」外交の中身は「まだ検討中」

2023年01月05日(木)12時25分

とはいえ問題もある。彼らがキャッチフレーズや断片的な政策を離れ、どのような国際的地位の獲得を目指し、どのような具体的な役割を果たそうとするのか、いまだに明らかではないことだ。

漏れ聞こえてくるのは、「具体的な内容はまだ詰めている」という話であり、それが現在の彼らの本音なのだろう。とはいえ当然、目指すべき国家像の不明確さは、個々の国々との外交政策にも影響を与える。

キャッチフレーズは大統領もお気に入りというから、政府が後ろ向きなわけではない。重要なのは韓国の経験が決定的に不足していることだ。大きな力は付けたものの、どう使っていいか分からない。それはかつて80年代の日本が経験した道でもある。

発足から7カ月がたった尹政権の対日政策が「日韓関係を重視する」との掛け声とは裏腹に、大きな成果を上げていないのもそのためだ。

新政権は何を目指し、日本といかなる関係を結ぼうとするのか。そしてそこにはどの程度の覚悟と決意が存在するのか。それが見えてこない限り、日本側が尹政権と大きく合意することは難しい。

しかし、それは彼ら自身が乗り越えなければならない問題だ。仮に明確な将来像が示されない場合、日韓関係に大きな進展を期待するのも難しい。2023年の韓国外交、そして日韓関係は彼らの「準備」に多くが懸かってくることになりそうだ。

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プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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