コラム

英総選挙は予測不能......ブレグジット賛否でねじれにねじれたイギリス世論

2019年12月10日(火)15時30分

でもそれに劣らず重要なのは、コービンの下で労働党が進歩的な中道左派の政党から急進的な左翼政党に変質したことだ。急進的社会主義はいつだって労働党の「一要素」で、これまでも何度か前面に出てきたことはあったが、主流ではない。 

そんな環境下で、あらゆる種類のあり得ない再編劇が起こっている。どの階級のイギリス人の間でもコービンよりジョンソン人気が上回っているが、その差は労働者階級で最大になっている(20ポイント)。労働党が伝統的に、文字どおり労働者階級の党だったことを考えると衝撃的だ。多くの労働者、特に北部の人々は、労働党をロンドン中心主義で、現実的というよりイデオロギー的で、コア支持層より各種「マイノリティー」の声を代弁するのにとらわれているとみている。

一方で保守党ももはや従来どおりではない。ブレグジットは、たとえ民意で選ばれた結果であっても、イギリスにとっては過激な急展開だ。そのため、従来は保守党支持だった多くの富裕層は、ブレグジットが彼らの資産や、安価な欧州からの労働力確保や、ビザなし欧州旅行や子息の留学といった「特権」に悪影響を及ぼすと考え、保守党を脅威と捉えている。

これまでは「安泰」だったロンドンや地元選挙区で、今回は苦戦を強いられている保守党議員もいる。同じように労働党議員も、元炭鉱の町など従来は強力な地盤だった選挙区で、今回は票を当てにできない。

この選挙では、階級よりも年代が大きな要因になるかもしれない。労働党政権下の経済失策でストライキが頻発した1970年代の記憶が鮮明な年配者よりも若者たちのほうが、コービンの急進主義を受け入れたがるようだ。

不確実な状況ながら、何となく「信頼できる」と言われ、「取りあえず政権党っぽく」見え、「まだましなほう」に感じられる保守党に、有権者の多くが付いていきそうだ。でも、もう一度言おう、僕は本当に分からない。

<本誌2019年12月17日号掲載>

20191217issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月17日号(12月10日発売)は「進撃のYahoo!」特集。ニュース産業の破壊者か救世主か――。メディアから記事を集めて配信し、無料のニュース帝国をつくり上げた「巨人」Yahoo!の功罪を問う。[PLUS]米メディア業界で今起きていること。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB窓口貸し出し、「悪評」抑えるルール整備を検討

ワールド

中ロは相互支援強化すべき、外相会談で王氏が訴え

ビジネス

FRB当局者、インフレ低下持続か「判断は尚早」 慎

ワールド

インタビュー:ウクライナ、同盟国の支援加速・直接関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story