ニュース速報
ビジネス

FRB当局者、インフレ低下持続か「判断は尚早」 慎重姿勢崩さず

2024年05月21日(火)08時15分

米連邦準備理事会(FRB)のジェファーソン副議長とバー副議長は20日、4月の消費者物価指数(CPI)上昇率は鈍化したものの、インフレがFRBの2%目標に持続的に回帰しつつあるとは断言できないと述べた。2022年6月撮影(2024年 ロイター/Sarah Silbiger)

Michael S. Derby Howard Schneider

[20日 ロイター] - 複数の米連邦準備理事会(FRB)当局者は20日、4月の消費者物価指数(CPI)上昇率は鈍化したものの、インフレがFRBの2%目標に持続的に回帰しつつあるとは断言できないとし、慎重な政策運営を求めた。

FRBのジェファーソン副議長はニューヨークで開催された米抵当銀行協会の会議で、このところ複数のインフレ指標で鎮静化が示されていることは喜ばしいが、インフレ率が2%回帰への持続可能な軌道に戻ったかを判断するには時期尚早だと述べた。

また、現在の金融政策は引き締め的だとの認識を示したが、年内に利下げを開始すると予想しているかについては明言を避けた。他の幹部らと同様に、今後の経済データ、見通し、リスクのバランスを注意深く評価していくと述べた。    

一方、バーFRB副議長はアトランタ連銀が開催した会議で「今年第1・四半期のインフレ指標は期待外れだった。金融緩和政策の支持に向け、期待していたほどの確信を与えてはくれなかった」と述べた。

さらに「金融引き締め政策が効果を発揮し続けるには、もう少し時間が必要だ」とも述べ、インフレ率がFRBの目標である2%に回帰することが明確になるまで利下げは保留するというFRBの包括的メッセージを支持する姿勢を示した。    

4月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年同月比で3.4%と3月の3.5%から鈍化した。また4月の小売売上高(季節調整済み)は予想外に横ばいとなり、経済活動の勢いが鎮静化しつつある兆候を示した。

しかし、1─3月のインフレ率が予想を上回ったことを受け、FRBの政策担当者は慎重な姿勢を崩していない。政策金利の引き下げを開始する前に、インフレ圧力が2%に戻る軌道に完全に乗っていることを確認したいと考えている。

クリーブランド地区連銀のメスター総裁はブルームバーグテレビに対し、インフレ率は目標とする2%に向けて低下するものの、急速には低下しないとの考えを示した。

その上で、これまでは年内に3回の利下げを実施する可能性が高いと考えていたが、現在の経済情勢を踏まえると「それが適切とは思えない」と述べた。

さらに、自身の予想に反してインフレ鈍化の進展が停滞したり、インフレが加速したりした場合、FRBは「金利を現在の水準により長く維持するか、適切なら金利を引き上げる」ことによって対応できるとした。

サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁はアクシオスのインタビューで、利上げの必要性を示す証拠は見当たらないものの、インフレ率が2%に向けて低下しているとは「確信していない」と述べ、利下げの緊急性はないとの見方を示した。

次回米連邦公開市場委員会(FOMC)は6月11日─12日。市場では現在、9月まで金利引き下げはないと予想されている。    

ジェファーソン氏は公式発言後のコメントで、経済成長と雇用創出の継続を容認しながら「インフレとの戦いを継続できると慎重ながらも楽観している」と述べた。また、経済成長と雇用創出は耐性を示しており、FRBがインフレ抑制に向け必要な政策を実行できると確信していると指摘した。   

ジェファーソン氏はまた、FRBのバランスシート縮小の状況についても言及。バランスシートの縮小ペースを大幅に減速させることにより、金融市場にストレスを与えるリスクを減らしながら縮小プロセスを進めることが可能になると指摘した。FRBが保有資産をどの程度まで縮小する必要があるのか​​、まだ分からないとも指摘した。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英国王夫妻、トランプ米大統領夫妻をウィンザー城で出

ビジネス

三井住友FG、印イエス銀株の取得を完了 持分24.

ビジネス

ドイツ銀、2026年の金価格予想を4000ドルに引

ワールド

習国家主席のAPEC出席を協議へ、韓国外相が訪中
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中