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アングル:トランプ氏治安対策、捜査官大量動員で「軽犯罪」摘発 

2025年08月29日(金)12時36分

 8月27日、先週のある夜、米首都ワシントンの警官らがハンドバッグを持った男性を呼び止めた。写真は17日、ワシントンの路上で協議するFBI捜査官とワシントンの警察官(2025年 ロイター/Al Drago)

Brad Heath Jack Queen

[ワシントン 27日 ロイター] - 先週のある夜、米首都ワシントンの警官らがハンドバッグを持った男性を呼び止めた。バッグから小さく透明なビニール袋がはみ出ているのを発見し、中に大麻が入っている可能性を疑ったためだ。

地元警察の日常業務ではよくある光景だ。だが今回違っていたのは、警官らに連邦捜査局(FBI)や大統領警護隊(シークレットサービス)など、5つの連邦法執行機関の捜査官が同行していたことだった。地元裁判所に提出された記録から判明した。

警官らは約3オンス(約85グラム)の大麻を押収した。ワシントンで合法的に所持できる量より1オンス多い。男性は軽犯罪で起訴され、罰金と短期の禁錮刑が科される可能性がある。 

この1件はトランプ米大統領が命じた暴力犯罪取り締まりの一環。トランプ氏は「犯罪の蔓延」に対処するため、数百人の連邦捜査官と州兵をワシントンに派遣し、民主党の市指導者らはこれを政治的パフォーマンスだと嘲笑している。

2週間の取り締りの結果、銃や麻薬が押収された。ただ一方、ワシントン地裁の記録によれば、大麻の使用や公共の場での飲酒といった軽微な犯罪への対処に連邦捜査官が大量に動員されている。麻薬密売人や武器密輸業者を標的としてきた法執行機関が、こうした軽微な犯罪を優先的に取り扱うことはまれだ。

ロイターはトランプ氏がワシントンで「緊急事態」を宣言した11日以降、地裁に提出された500件以上の刑事事件を調査した。

記録によれば、トランプ氏の犯罪対策特別チームは過去2週間で少なくとも69件の地元の事件に関与しており、その半数近くは比較的軽微な違反行為だった。

その他はワシントンの地方法に基づく重罪であり、連邦機関が通常扱う、より重大な連邦法上の重罪ではなかった。その約半数は無許可の銃器携帯、販売目的の薬物所持、あるいはその両方だった。

ロイターが確認した事件の中に、暴力犯罪で検挙された者は1人もいなかった。

<地方警察の業務代行>

首都ワシントンの地裁は地元の刑事事件を扱っており、首都で逮捕された者の大半が同地裁に送致される。以前は連邦機関がこうした事件に関与することはまれだった。

「米国の納税者は、高度な訓練を受けた特別捜査官が地方警察の業務を代行するために巨額の税を納めているわけではない。地方警察が対応できない事件を処理するのが任務のはずだ」と語るのは、最近までアルコール・タバコ・火器・爆発物取締局(ATF)の上級法律顧問を務めていたジェフ・コーエン氏だ。

しかしホワイトハウスのテイラー・ロジャース報道官は、この作戦により8月にギャングメンバーや暴力犯罪者、児童虐待者、致死性薬物販売者を含む1000人以上の危険な犯罪者が街から排除されたと述べた。ロイターはこの数字を検証できなかった。これは政府が逮捕者を特定していないことも一因だ。

ロジャース氏は「これらは『軽微な違反』ではない。作戦の成功を過小評価しようとする試みは虚偽であるだけでなく、これらの犯罪の被害者に対する侮辱だ」と語った。

また司法省は声明で、20の機関から2500人の要員をワシントンに派遣したことで犯罪が減少し、都市の安全性が高まったと表明。これに反する主張は「現実に基づかない」と述べた。

<銃器押収>

コロンビア大学法科大学院のジェフリー・フェイガン教授は、連邦捜査官と州兵を大量動員して政権が何をしたいのか不明だと首をかしげる。「追加投入されたこれらの資源は、地元警察が以前やっていなかった何をしているのか。地元警察を補助しているのか。地元警察が殺人事件や、より重大な犯罪の詳細な捜査に専念できるよう支援しているのか。付加価値は何なのか」と問いかけた。

フェイガン氏は「仮に連邦当局が、首都警察が元々行うはずだった業務を単に代行しているだけなら、見せかけだけの対策だ」と指摘した。

1月までATF長官だったスティーブン・デッテルバック氏は、連邦当局が都市で犯罪対策に乗り出す際、これまでは数カ月にわたる調査活動から始め、銃器密売人や常習犯を特定してきたと説明。「引き金を引く犯罪者を特定し、彼らを刑務所に送ることに焦点を当てる。末端の者ではない」と語った。

特筆すべきこととして、ロイターが検証した銃器や大麻押収のケースの多くは、軽微な違反行為を行った人々を警官が呼び止めるところから始まっていた。その警官に最大6人もの連邦捜査官らが同行していた。

地裁の文書からは、特別な訓練を受けた高給の連邦捜査官が、人員増強以上の何に貢献しているのかが不明で、詳細が記された事例はごくわずかだ。

ただ、威圧的な態勢そのものが、一部の容疑者に自白を促したケースはあるようだ。

15日深夜0時過ぎ、夜間閉鎖中の公園で路傍に停車した車内で、ノートパソコンで映画を観ていた2人に、警官と4つの連邦機関の捜査官から成るチームが接近した。

大勢の警官の出現に動揺した1人は「やばい」と口にし、グローブボックスに銃を所持していることを認め、警官らは男を無許可拳銃所持で起訴した。

ロイター
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