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米関税の影響大きくなければ「利上げ方向」、見極めは難しい=氷見野日銀副総裁

2025年09月02日(火)17時25分

 9月2日 日銀の氷見野良三副総裁(写真)は2日午後、北海道釧路市での金融経済懇談会後の記者会見で、米国の関税の影響について、これから出てくると現時点ではみているが、それほど大きな影響が表れないと確認できれば「利上げ方向に働く要因になる」と述べた。写真は2023年6月、都内で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Takahiko Wada

[釧路市(北海道) 2日 ロイター] - 日銀の氷見野良三副総裁は2日午後の記者会見で、米関税の影響について「基本的にはこれから出てくる」とみているが、それほど大きく表れないと確認できれば「利上げ方向に働く要因になる」との見方を示した。ただ、企業からのヒアリング情報や内外の経済指標を注視していく一方で、いつまで見極めるのかの判断は難しいと話した。

日銀保有の上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の処分を始める時期については「具体的に申し上げるだけの準備はない」として明言を避けた。

氷見野副総裁は米関税の影響について「世界全体として不確実性が残っている」と指摘。経済については「下方向のリスクにより注意する必要がある」と話した。

午前の金融経済懇談会のあいさつでは、基調的な物価上昇率が「2%にかなり近づいてきている」と述べたが、会見では具体的にどの程度なのか「ゾーンを狭める表現は差し控えたい」とした。

米国では米連邦準備理事会(FRB)の金融政策運営を巡り、トランプ大統領からの圧力が強まっている。また、ベセント財務長官は一部メディアのインタビューで、日銀の金融政策が「後手に回っている」と述べた。

氷見野氏は一連の動向や発言へのコメントを控えるとした上で、中央銀行の独立性とアカウンタビリティは「長い目で、通貨に対する信認を確保する上で大切な工夫だ」との認識を表明。金融政策運営に当たっては、先走りにも後手にもならないよう「両方に気を付けながら適切な政策運営に努めていきたい」と述べた。

足元の物価高は、需要サイドよりも供給サイドの要因によるところが大きい。氷見野副総裁は、金融政策は需要に対して直接効果があるため、需要ショックの場合は政策判断がしやすいが、供給ショックの場合は「需要ショックの時よりさらに悩んで判断していくことになる」と語った。

<氷見野副総裁の発言受け、円安が進行>

氷見野副総裁が午前のあいさつで、関税の影響について「当面は大きくなる可能性の方により注意が必要ではないか」などと述べたことで、外為市場では円安が進んだ。

SBI新生銀行の森翔太郎シニアエコノミストは、氷見野氏の発言について「従来の日銀のコミュニケーションや7月展望リポートの見通しがおおむね踏襲され、利上げ再開への前のめり感はうかがえなかった」と指摘。今回の発言を踏まえれば、米国の関税政策の影響を見極める局面が当面は続くと見込まれ「10月会合での利上げ再開の可能性は低いのではないか」との見方を示した。

ロイター
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