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米8月雇用17.3万人増、失業率5.1%に低下 9月利上げ可能性残す

2015年09月05日(土)00時26分

9月4日、米労働省は8月の雇用統計で非農業部門雇用者数が17万3000人増となったと発表した。伸びは市場予想の22万人増を下回った。製造業が2013年7月以来の大幅減となったことが響いた。写真は2009年11月、米カリフォルニア州で(2015年 ロイターS/Robert Galbraith)

[ワシントン 4日 ロイター] - 米労働省が4日発表した8月の雇用統計によると、非農業部門の雇用者数は前月と比べて17万3000人増と、市場予想の22万人増を下回った。一方、失業率は5.1%と7年半ぶりの水準まで改善、賃金上昇も加速し、米連邦準備理事会(FRB)が今月利上げに踏み切る可能性を残した。

増加数は5カ月ぶりの少なさだった。製造業が2013年7月以来の大幅削減となり、全体水準を押し下げた。

7月の数字は当初発表の21万5000人増から24万5000人増へ上方修正された。

8月の雇用統計はここ数年、当初発表の数字が後に大幅に上方修正される傾向が続いており、今回発表の数字は経済の現状を正確に反映していない可能性がある。

6月と7月は当初発表から合わせて4万4000人の上方修正となった。

8月の時間当たりの賃金は8セント上昇し、1月以来の大幅な増加となった。週労働時間は34.6時間へと増えた。

エコノミストらは季節変動を調整する計算方法にゆがみがあり、学校の新学期入りを控えた季節変動が十分勘案できていないと主張している。8月は回答率が低いため数字がゆがむ。労働省の担当者は8月の数字は上方修正されることが一般的だと述べた。

ドイツ銀行( ニューヨーク)で外貨戦略部門のグローバル責任者を務めるアラン・ラスキン氏は「雇用統計の内容は9月にFRBが利上げしてもおかしくない内容だ。問題は不安定な金融市場がその計画を狂わせるかどうかだ」と述べる。

米経済は底堅いとの見方は変わらないかもしれないが、中国経済の減速や世界的な金融市場の混乱の中で、今月16━17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でFRBは難しい判断を迫られそうだ。

それでもなお、雇用市場は改善しており、最近発表された一連の好調な経済指標を補強する。自動車や住宅販売は底堅く、第3・四半期の序盤は経済に勢いがあることを示唆している。第2・四半期の国内総生産(GDP)は年率換算で3.7%増と力強く伸びた。

8月の失業率は前月から0.2ポイント低下の5.1%と、08年4月以来の低水準となった。物価が安定的に上昇しているとFRBがみなす基準に近づいた。

就職を諦めた人や正規雇用を望みながらもパートで働いている人を含めた広義の失業率は10.3%と、7月の10.4%から低下し、08年6月以来の低水準になった。

就業者数の内訳をみると、建設業が3000人の増加。7月も7000人増だった。

一方で鉱業と木材関連は1万人減った。製造業は自動車需要が底堅かったにもかかわらず1万7000人減となった。

時間当たりの賃金は前年同月比2.2%の増加。エコノミストが健全とみなす3.5%増をまだ下回っている。油田サービスの賃金低下が足かせとなっているとするアナリストもいる。

ただ、雇用市場が引き締まりつつあることに加え、複数の州・地方政府が最低賃金引き上げを決めたことで、いずれは賃金の伸びが加速し、物価上昇率がFRBの目標とする2%に近づくとの確信を政策担当者に与えそうだ。

*内容を追加しました。

ロイター
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