コラム

温もりのある声で癒しを 感情労働ストレスを軽減させた取り組み

2017年09月10日(日)15時30分

コールセンターのスタッフはいつも暴言に心をすり減らして働く (c) GS Caltex

<ストレスの多い現代、企業の問い合わせ窓口やユーザーサポートの担当者は、顧客のかかえるストレスをぶつけられても、誠心誠意対応しなければならない。そうした問題に対するユニークな取り組みが行われた>

感情労働(Emotional Labor)とは、業務上特定の感情を演出または維持しないといけない労働という意味で、米国の社会学者Arlie Russell Hochschildの「Emotion work, feeling rules, and social structure」(American Journal of Sociology. University of Chicago Press. 85 (3): 551-575. JSTOR 2778583、1979年11月)という論文で紹介されたのをきっかけに世界中で広まった用語である。

例えば、航空会社のキャビンアテンダント、銀行窓口のテラー、コールセンターのオペレーター、顧客相談室や電話相談窓口担当者など、直接顧客と接する業種で、相手に何を言われようと常に笑顔で親切に対応する仕事をしている人を感情労働者という。

職場で自分の感情をさらけ出して仕事をしている人はとても少ないと思うので、結局社会人は誰もが感情労働をしていると言えるが、韓国では特に企業のコールセンター、修理受付窓口がもっとも感情労働を強いられる職種と言われている。苦情を受け付けたり、サービスを解約しようとする顧客をなんとか引き止めたり、商品の故障で不便な思いをしている顧客に謝罪したり、顧客に何を言われても丁寧に話を聞くのが仕事であるが、普通に話をする人ばかりいたら苦労はしない。最大限親切にマニュアル通りにしてやっと電話が終わったと思っても、電話をしてきた顧客が「親切ではなかった」と本社にクレームをいい、業務評価が下がる二重苦もある。

韓国の石油会社GSカルテックスは、社会貢献活動の一環として「世を変えるエネルギーキャンペーン」を行っている。その一つとして、「心をつなげる保留音」というプロジェクトを行った。GSカルテックスと韓国GMが協力し、自動車メーカー韓国GMのコールセンターに電話をかけると流れる保留音をちょっと特別なものに変えるプロジェクトである。

【参考記事】ソウルで年に1度空襲サイレンが鳴る理由は? 韓国版防災の日「ウルジ」
【参考記事】デジタル時代だからこそ価値がある? 韓国で話題の手書き代行ビジネス

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米FRB議長人選、候補に「驚くべき名前も」=トラン

ワールド

サウジ、米に6000億ドル投資へ 米はF35戦闘機

ビジネス

再送米経済「対応困難な均衡状態」、今後の指標に方向

ビジネス

再送MSとエヌビディアが戦略提携、アンソロピックに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story