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2021年に話題となった、イヌにまつわるワンダフルな研究

1万年以上付き合いがあっても、イヌに関する謎は尽きない(写真はイメージです) KAT_TAKA-iStock
<イヌのほうがヒトより左利き率が高い? 飼い主が他のイヌを可愛がると嫉妬する? 「1万年来の友」でありながら、いまだ謎の尽きないイヌについての興味深い研究を紹介する>
イヌは世界で最も古くから「ヒトの友」として飼育されてきた動物です。1万5000年以上前にオオカミから分化し、1万2000年前にはヒトとともに生活をしていた痕跡があります。日本では約1万年前の縄文時代早期の遺跡から埋葬されたイヌの骨が出土しています。
一般社団法人ペットフード協会が2020年に行った調査によると、日本では848万9千匹のイヌが飼育されています。1年以内の新規飼育者による飼育頭数は、コロナ禍のステイホームの影響もあって、最近5年間では最も多い46万2000匹でした。2021年の新規飼育者は、さらに増加すると予想されています。
科学の世界では、今年もイヌに関する研究がたくさん行われました。話題になった研究を振り返ってみましょう。
1.ヒトよりもイヌのほうが左利きの割合が多い
利き手とは、ヒトの左右の手のうちで、より多く使う手のことです。通常は、器用さや運動能力が他方よりも優れています。最新の研究ではヒトの左利きは約10.6%です。
英BBCの「Test Your Pet」という番組では、イヌは左右どちらの前肢を使ってエサを取るかのデータを、約1万8000匹分集めました。
飼い主は、イヌの前肢が入るだけの幅のある筒を用意して、奥にエサを置きます。3回連続で左右のどちらの前肢でエサ取り出したか観察し、「ほとんどの場合で右肢(右利き)」「ほとんどの場合で左肢(左利き)」「左右どちらが優先的なのか判断し難い(両利き)」の三択でBBCに回答しました。
英リンカーン大の研究チームが結果を分析したところ、74%のイヌが「左右どちらかの前肢を優先的に使った」、つまり「利き手」を持っていることが分かりました。このうち58.3%が右利き、41.7%が左利きでした。イヌもヒトと同じく右利きのほうが多いですが、左利きの割合はヒトよりもずっと大きいことが分かりました。
さらに、オスは43.9%、メスは39.3%が左利きで、オスの方が左利きの割合が大きいことも分かりました。これは、男性は女性の1.23倍左利きが多いとされるヒトと同様の傾向でした。研究者たちは、ヒトとイヌとの差や性差について、ヒトは幼い頃に右利きに矯正される場合があることや、性ホルモンが利き手に影響を与えた可能性を示唆しました。
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