コラム

イヌ好きならぜひとも知っておきたい、イヌにまつわるワンダフルな研究

2021年12月21日(火)11時15分
イヌ

1万年以上付き合いがあっても、イヌに関する謎は尽きない(写真はイメージです) KAT_TAKA-iStock

<イヌのほうがヒトより左利き率が高い? 飼い主が他のイヌを可愛がると嫉妬する? 「1万年来の友」でありながら、いまだ謎の尽きないイヌについて2021年に話題となった興味深い研究を紹介する>

イヌは世界で最も古くから「ヒトの友」として飼育されてきた動物です。1万5000年以上前にオオカミから分化し、1万2000年前にはヒトとともに生活をしていた痕跡があります。日本では約1万年前の縄文時代早期の遺跡から埋葬されたイヌの骨が出土しています。

一般社団法人ペットフード協会が2020年に行った調査によると、日本では848万9千匹のイヌが飼育されています。1年以内の新規飼育者による飼育頭数は、コロナ禍のステイホームの影響もあって、最近5年間では最も多い46万2000匹でした。2021年の新規飼育者は、さらに増加すると予想されています。

科学の世界では、今年もイヌに関する研究がたくさん行われました。話題になった研究を振り返ってみましょう。

1.ヒトよりもイヌのほうが左利きの割合が多い

利き手とは、ヒトの左右の手のうちで、より多く使う手のことです。通常は、器用さや運動能力が他方よりも優れています。最新の研究ではヒトの左利きは約10.6%です。

英BBCの「Test Your Pet」という番組では、イヌは左右どちらの前肢を使ってエサを取るかのデータを、約1万8000匹分集めました。

飼い主は、イヌの前肢が入るだけの幅のある筒を用意して、奥にエサを置きます。3回連続で左右のどちらの前肢でエサ取り出したか観察し、「ほとんどの場合で右肢(右利き)」「ほとんどの場合で左肢(左利き)」「左右どちらが優先的なのか判断し難い(両利き)」の三択でBBCに回答しました。

英リンカーン大の研究チームが結果を分析したところ、74%のイヌが「左右どちらかの前肢を優先的に使った」、つまり「利き手」を持っていることが分かりました。このうち58.3%が右利き、41.7%が左利きでした。イヌもヒトと同じく右利きのほうが多いですが、左利きの割合はヒトよりもずっと大きいことが分かりました。

さらに、オスは43.9%、メスは39.3%が左利きで、オスの方が左利きの割合が大きいことも分かりました。これは、男性は女性の1.23倍左利きが多いとされるヒトと同様の傾向でした。研究者たちは、ヒトとイヌとの差や性差について、ヒトは幼い頃に右利きに矯正される場合があることや、性ホルモンが利き手に影響を与えた可能性を示唆しました。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト/博士(理学)・獣医師。東京生まれ。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第 24 回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル157円台へ上昇、34年ぶり高値=外為市場

ワールド

米中外相会談、ロシア支援に米懸念表明 マイナス要因

ビジネス

米PCE価格指数、3月前月比+0.3%・前年比+2

ワールド

ベトナム国会議長、「違反行為」で辞任 国家主席解任
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story