コラム

【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ステーション補給機の価値 「人類のさらなる可能性切り開く鍵に」

2025年11月02日(日)09時40分
HTV-X1号機がISSのロボットアームに把持される瞬間

次世代ハイビジョンカメラ(HDTV-EF2)で撮影された新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)1号機。ISSのロボットアーム(SSRMS)による把持の様子 画像:JAXA提供

<油井亀美也宇宙飛行士が操作するロボットアームによってISSに結合されたHTV-X1号機。一体どんな機能が「新型」なのか。日本が開発・運用する意義とは? 関係者の想いを紹介しながら、7つのキーワードでその実力や価値を概観する>

10月26日に打ち上げられたJAXA(宇宙航空研究開発機構)開発の新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)1号機は、日本時間の30日0時58分頃、ISS(国際宇宙ステーション)に到着しました。

HTV-XはISS滞在中の油井亀美也宇宙飛行士が操作するロボットアームで優しく素早く正確に把持(キャプチャ)されました。その後、「ハーモニー」(第2結合部)へ取り付けられ、同日20時10分頃に結合作業が完了。23時過ぎに油井さんらISS長期滞在クルーが入室しました。


HTV-Xはどんな機能が「新型」なのでしょうか。今後の宇宙開発においてどのような期待がされているのでしょうか。関係者の想いも紹介しながら、7つのキーワードで概観しましょう。

◇ ◇ ◇

1.HTV-Xはここがすごい

HTV-Xは2009~20年まで運用されていた「こうのとり(宇宙ステーション補給機:HTV)」の後継機として開発された、ISSへ実験機材や宇宙飛行士用の食料や水などを届ける無人の物資輸送機だ。

「こうのとり」と比べて、①貨物の搭載能力や運用性が向上し、②宇宙に行く機会を活用して、輸送だけでなく将来を見据えた様々な技術実証を行う点で進化している。

HTV-Xの貨物の搭載能力は質量約5.85トン(「こうのとり」は約4トン)、容積は78立方メートル(同49立方メートル)で、いずれも1.5倍ほど向上している。また、物資の搭載は打ち上げの24時間前(同80時間前)までできるようになり、カーゴへの電源供給で電源が必要な実験装置への対応も可能となったため、利便性が高まった。

さらにプロジェクトマネージャの伊藤徳政さんが「二刀流」と呼ぶように、物資輸送だけでなく、宇宙での様々な実験に使われることも大きな魅力だ。

newsweekjp_20251101145338.jpg

JAXA新型宇宙ステーション補給機プロジェクトチームの伊藤徳政プロジェクトマネージャ。HTV-X1号機の把持成功を喜ぶHTV-X運用管制室にて(10月30日) 画像:JAXA提供

たとえば、将来の国際的な宇宙探査にHTV-X発展型で対応できるよう、ISSとの自動ドッキングの技術検証も行う予定だ。これは月周回軌道への設置が計画されている有人拠点(Gateway)では、人がいない期間のほうが圧倒的に長いと想定されるため、補給機は人に頼らない自動ドッキング技術が必須となるからだ。

加えて、HTV-XはISS離脱後も最長1.5年間にわたって単体で飛行が可能なことから、物資補給後に宇宙空間で技術実証ミッションを行えるように設計され、そのための実験装置や小型衛星も多数搭載している。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米は依然最大の同盟国、EU外相が強調 トランプ政権

ビジネス

7─9月GDP2次速報、年率2.3%に下方修正 設

ビジネス

インド成長率、今年度は7%以上に 基礎的要因強く=

ビジネス

10月経常収支は2兆8335億円の黒字=財務省
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story