コラム

AIエージェントの時代はどこまできているのか

2024年05月07日(火)12時40分

Appleの純正の音楽アプリや地図アプリなら、siriを使って音声である程度操作できる。一方で他社製の音楽アプリや地図アプリはほとんど音声で操作できない。私はYouTube MusicやGoogle Mapを愛用しているのだが、自動車の運転中にこうしたアプリを音声で操作できればずいぶんと便利になるように思う。

ところがFerret-UIの技術だと、画面上のボタンなどのデザインの意味を理解できるようになるので、他社製のアプリもすべて操作できるようになるわけだ。

他にも同様のコンピューター画面理解の技術が、オープンソースのソフトウエアとして次々と登場してきている。
ウェブサイトは人間が理解しやすいようにデザインされている。人間に理解しやすくても機械には理解しにくいのが現状だ。Ferret-UIなどの技術の進化で、AIエージェントが画面上の画像を理解し、人間同様にコンピューター機器を操作できるようになる時代に向かっているわけだ。

3つ目はAction。AIエージェントは迅速に動くことが必要だ。音声ボットの電話の受け答えがタイムリーでなければ人間は電話を切ってしまうことだろう。最近Groqと呼ばれるレスポンスの速い半導体が注目されているのは、このためだ。

この論文の中では、必要な能力として次のようなものを挙げている。GUIグラウンディング(上に挙げたVisionのような能力)、オペレーションナレッジ(アプリの使い方の理解)、Long-Horizon Task Execution(上のReasonで挙げたようなタスクを分解して実行する能力)、Interactive Learning(試行錯誤する中で学んでいく能力)、スケーラビリティ(拡張性)、マルチモーダル(テキスト、画像、音声、映像などのデータを理解する能力)などだ。

この論文によると、人間は与えられたタスクの72%を問題なく実行できたのに、今日のAIエージェントは12.24%しか達成できなかったという。

なぜAIエージェントは、まだまだ能力が低いのか。一番の問題は、Visionだという。画面上のボタンなどの画像をうまく理解できなかったようだ。一般的ではないデザインや、ころころデザインが変化する画像ボタンなどに対処できなかったようだ。ドロップダウンメニューも、うまく操作できなかったという。

また複雑なタスクの実行も苦手だったようだ。今後の論理的思考の能力の向上が待たれるところだ。

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プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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