コラム

「元気をもらう」の正体は心臓から出る電磁場 TransTechカンファレンスから

2018年11月30日(金)16時00分

この論文では「多くの人はコミュニケーションが言語や表情、声のトーンなどのわかりやすい信号を通じて行われていると思いがちだ。しかし実際には潜在意識下で、かすかではあるものの、しっかりとした影響力のある電磁波やエネルギーコミュニケーションのシステムが作動している」と結論づけている。

「元気をもらう」「エネルギーをもらう」という表現は、感覚的で抽象的なものので、その人が何を意味しているのかは正確には分からない。しかし「元気をもらった」と表現する人の中には、他人の規則正しい電磁波の影響を受けて、自分の脳波が安定した波形になる状態のことを「元気をもらった」と表現しているケースがあるかもしれない。

この領域はまだまだ分からないことだらけだが、少なくとも人間は電磁波などのエネルギー交換を通じてコミュニケーションしている、ということだけは事実。ポジティブな感情、ネガティブな感情以外のより複雑な情報も、人間は電磁波でやりとりしているのだろうか。今後の研究成果が楽しみだ。

そのほかの興味深い実験結果

この論文に記載されている、そのほかの興味深い実験結果についても触れておきたい。

下のグラフはある夫婦の寝ている間の心拍数の推移比較。心拍数の波形がシンクロしているのが分かる。

11.jpg

論文によると、寝ている間は身体的一貫性の状態になり、その結果、近くにいる人と心臓の動きがシンクロするようだ。

一方で、目が覚めているときに、二人の人間の心臓がシンクロするのは、非常にまれだとしている。

ただし下のグラフにあるように、ポジティブな感情を互いに持てば、心臓がシンクロするようだ。

110yukawa5.jpg

シンクロするのは人間だけではない。ペットと飼い主の心臓のリズムもシンクロするという。下のグラフにあるように、同じ部屋にいるときに、心臓のリズムが見事にシンクロしている。

1130yukawa6.jpg

電磁波だけでも情報は伝達され他人とシンクロすることは可能だが、手を触れることでシンクロ度合いがよりはっきりしてくる。それを示したのが下のグラフだ。

1130yukawa7.jpg

左は手を繋いでいないときの被験者Bの心電図と被験者Aの脳波。右は手をつないだときの心電図と脳波。手をつなぐことで被験者Bの心電図と被験者Aの脳波の波形がよりはっきりとシンクロしているのが分かる。

手をつなぐとどのように情報が伝達するのだろうか。皮膚の電気信号だろうか。この分野も興味深い。

なかなか斬新な研究成果だけど、研究者の間ではどの程度、評価されているものなのだろうか。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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