コラム

スタンフォード大学ビジネススクール、AI時代にそなえデータ分析を必須科目に

2018年01月30日(火)13時30分

シリコンバレーの最先端企業とつながりが深いスタンフォード大学(米カリフォルニア州) jejim-istock.

この記事はAI新聞からの転載です

AIが進化すれば社会が大きく変化するのは間違いない。その社会変化を前にして教育はどう変化すべきなのだろうか。AI技術を牽引する世界的なテクノロジーの集積地の1つである米シリコンバレー。そのど真ん中に位置する名門スタンフォード大学のビジネススクールの学部長ジョナサン・レビン氏が来日したので、その辺りの話を聞いてみた。

ーービジネススクールで教えている内容って、10年前と比べて変化しているのでしょうか?

レビン氏 教える内容は常に変化し続けています。なぜなら学生のニーズが変化してきているからです。それに伴い教授陣や事務局は、新しいクラスやカリキュラムのアイデアをどんどん出してきています。

ただ変化しない点もあります。変化しないのは、ビジネススクールの目的が学生の可能性を最大限に広げるためにあるという考え方です。

一方で変化している点としては、過去10年間で学生の人格形成に影響を与えるようなカリキュラムが増えたということでしょうね。もちろんファイナンスや会計などの授業は、以前と同様にあります。でもそうした基礎的なスキルを教える授業に加えて、パーソナル・グロース、パーソナル・デベロップメントと呼ばれるような授業が増えてきました。思いやりや共感といった資質を育成する授業です。思いやりや共感といった資質は、リーダーとして組織を引っ張っていったり、チーム内でのコミュニケーションを促進するために、不可欠な資質だからです。

あと最近は、ビジネススクールにいろいろな人が講師として参加してくれるようになりました。各分野の教授陣もそうですし、ビジネス界から参加してくれる人が増えました。

ーー有名なビジネスパーソンだと、どんな人が講師として来られてますか?

レビン氏 Googleの元CEOのEric Schmidt氏、OracleのCEOのSafra Catz氏などが講師としてきてくれています。あとは航空会社JetBlueの会長だったJoel Peterson氏が、非常勤教授になってくれています。

gakubucho.jpg

ーーAIが進化し普及すれば、社会が大きく変化するものとみられています。教育も変化すべきだと思うのですが、スタンフォード大学ビジネススクールは今後どう変化していくと思いますか?

レビン氏 AIやデジタル技術は、世の中を大きく変える力を持っています。今後10年から20年で、社会はまった異なる形になっていることでしょう。当然、われわれのカリキュラムにも変化をもたらすと思います。

まずはスキルとして、データを読み解く力が不可欠になると考えています。どの企業でも幹部は、データや技術に詳しくなければなりません。なので昨年からデータ分析とデータディシジョンのクラスの内容を全面的に刷新しました。よりハンズオン方式で、実際に大きなデータを取り扱う内容に変えました。昨年1年間でこの新しいやり方を試験的に運営し、今年からこうしたクラスを必須科目にしました。

またこうしたスキルだけではなく、ビジネスリーダーはより大きな視座で社会の変化を読み解く力が必要になってきます。AIによってどのような仕事が自動化されるのか。その結果、どのような仕事が生まれてくるのか。既存の業界や大企業をどう変えるのか。どのようなスタートアップにチャンスがあるのか・・・。ビジネスリーダーは、だれよりも早く正確に時代の先を読まなければなりません。

この点で、スタンフォード大学は非常に有利だと思います。ラッキーなことにスタンフォード大学には、機械学習を専門に研究してきた教授はもちろんのこと、AIが社会にどのような影響を与えるのかを研究している教授もいます。企業にとって、人間の心理にとって、AIがどういう意味を持つのかを研究している教授もいます。世界のトップレベルの教授が揃っていて、しかも分野ごとの垣根が低い。さらには大学の周りには、最先端のビジネスが揃っていて、大学とビジネスの垣根も低い。大きな視座で社会の進む方向を読み解けるのに最適な環境が揃っているのがスタンフォード大学の強みであり、スタンフォード・ビジネス・スクールの強みだと思っています。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

「米国売り」再燃、トランプ氏が欧州に追加関税 恐怖

ワールド

トランプ氏のグリーンランド巡る関税警告は「適切」=

ワールド

米最高裁、トランプ関税の合憲性判断示さず 次回判決

ビジネス

英中銀総裁、地政学リスク「非常に警戒」 グリーンラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 4
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危…
  • 5
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生…
  • 6
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 7
    トランプが「NATOのアメリカ離れ」を加速させている…
  • 8
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 9
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 10
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 9
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story