コラム

テックフィクションの書き手を目指して

2015年07月14日(火)17時16分

 こうした理由から「ITジャーナリスト」と名乗りたくないと思った時期がありましたし、実際につい最近までは、そう名乗っていませんでした。「元ITジャーナリスト」と名乗ったこともありました。しかし、初対面の方に一言で自分の仕事を理解してもらえる言葉で「ITジャーナリスト」を超える言葉がほかに見当たらないので、最近はまた「ITジャーナリスト」と名乗ることが増えてきました。

 そんな中、起業家で友人の新城健一さんから「TF(テクノロジー・フィクション)」という言葉を教わりました。恐らく彼の造語だと思います。「SF(サイエンス・フィクション)」は遠い未来の物語です。「テクノロジー・ジャーナリズム」は、今、現在のテクノロジーの姿を報じる仕事です。「TF(テクノロジー・フィクション)」はその中間。「感覚的には2歩先の未来。ちょうど湯川さんが読み解こうとしている近未来です。そして、その近未来の姿を読み解くことが今、非常に重要になってきているんです」と新城さんは言います。

 時代の変化が加速しているため2歩先の未来が、あっという間に現実のものになってしまいます。「フィクション」ですから架空の物語なのですが、「夢物語でいいから、いろんな近未来のシナリオを聞きたい。そのシナリオをベースにビジネスのアイデアを練りたいから。変化が早い時代には、SFよりも技術ジャーナリズムよりもTF(テクノロジー・フィクション)が必要なんです」と新城さんは「TF(テクノロジー・フィクション)」の価値を語ってくれました。

 まさしくそのTFの領域は、私がこれまで目指してきたものでもあり、やっていてワクワクする仕事でもあります。将来は「SF作家」ならぬ「TF作家」を名乗れるようになればいいなと思っていますが、まだ大きな実績もなく、TFという言葉も知られていませんので、しばらくは「ITジャーナリスト」を名乗り続けると思います。しかし仕事の内容は「TF(テック・フィクション)」を目指していきたいと思っています。今回から連載が始まるこのコラムでも「TF(テック・フィクション)」の話を展開していきたいと思っています。よろしくお願いします。

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

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