コラム

陸と海の中国封鎖を狙うエスパー長官の意外な訪問先は

2019年08月23日(金)18時04分

モンゴルは社会主義体制の崩壊後、常にアメリカ主導の軍事作戦に参加し、国連のPKO部隊にも要員を派遣し続けてきた。モンゴル軍は数こそ少ないものの、アフガニスタンをはじめ、イラクとスーダンなどで最前線の危険地帯に配備されている。「尚武の民族」にふさわしく、困苦と危険をいとわないモンゴル軍の奮戦ぶりは米軍当局に高く評価されており、米政府もそれに見合う支援をモンゴルに落としてきた。

こうした「相思相愛」の関係をアメリカはさらに一段上げようとしている。対中ロのTHAAD(高高度防衛ミサイル)をモンゴル草原に配備し、准軍事同盟を締結しようと動いてきたのだ。

こうした動きは今に始まったものではない。数年前のことだが、私は沖縄駐留米軍の関係者がモンゴルの首都ウランバートルを訪問していた際に、たまたま同じホテルに宿泊していたことがある。モンゴルメディアは同盟締結を探りに来ている、と当時から盛んに報道していた。

「アメリカとデートはするが、結婚は慎重にならざるを得ない。北極熊(ロシア)と龍(中国)のはざまに置かれているからだ」と、モンゴル軍関係者があるシンポジウムで語っていた。アメリカ主導の国際秩序維持と平和構築には積極的に関与するものの、「インド太平洋戦略」の一翼を担うほどの政治的傾斜をモンゴルには期待できない。

アメリカがこの地域で一帯一路の中国と対峙する共同戦線を組むには、まず陸上での戦略構築が課題になるだろう。

<本誌2019年8月27日号掲載>

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※8月27日号(8月20日発売)は、「香港の出口」特集。終わりの見えないデモと警察の「暴力」――「中国軍介入」以外の結末はないのか。香港版天安門事件となる可能性から、武力鎮圧となったらその後に起こること、習近平直属・武装警察部隊の正体まで。また、デモ隊は暴徒なのか英雄なのかを、デモ現場のルポから描きます。


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プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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