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最新ポートランド• オレゴン通信──現地が語るSDGsと多様性

山本彌生|アメリカ

『ポートランド・スタイル』自分らしく、IKIGAIを手にいれる旅

2017 TEJ  Mini Dude Catcher.jpeg「ついでに、こんなモノまで作っちゃいました~。でも結構大変だったんです。ハイ。」Photo | Jeffrey Hammerly

今、そしてこれからのポートランドの町、そして観光・サービス業へのヒント

ポートランドを訪れる日本人は、生活するように町を歩き行動することで、自分を見つめ直す人が多いといいます。

持続可能な生活、地に足が付いたライフスタイル、エコ。それを体感すべく、町中にある緑豊かな自然に身を置いて過ごす。町を歩けば、つたない英語にもきちんと耳を傾けてくれる、そんな心根の良い現地の人たちに出会う。交流が始まる。

そんな理由から、米国の都市としてのリピート率と一人旅の人の率はトップレベルです。

「この町を訪れる人が望む経験。それは、ただの旅行ではなく、まるで生活をしているかのような心地よい体験。それに、ポートランドの人は大の親日家。そんな好感度から、日本人観光客をゲスト扱いではなく、家族のように付き合っていきたい。そう思っている人が多いのは、なによりもうれしい!」

過去20年間、革新的なアイディアでここまで成長させてきた経験。そこから見える、今のコロナに喘ぐ日本の観光、サービス業に何かヒントとは。そこを聞かせて欲しいと問いかけると、ひと呼吸おいて低い口調で語り始めます。

「島国日本だけの内方向からの視点だけではなく、常に外にも目を向けること。今世界に、どんな流れがあるのか。何が求められているのか。様々な違う種類の情報を駆使して、積極的にアップデートしていくことが大切です。特にこの時期、人々のニーズは早いスピードで変わりますから。

それに、今後の日本は今まで以上に、経済的、文化的にも海外の国々と切っても切り離せない。そんな関係値になってくことは、間違いありません。市場の動向や人々の思考も、よりグローバルな意識を反映したものに変化し続けていくでしょう。

人々は、今まで以上に、リアルで活気のある、小規模な、自分らしくいられる場所に身を置きたい。そこを強く望むのではないでしょうか。それに加えて、人口的に造り上げられた見せかけのものでは無い居場所であること。そこもポイントです。

これから人々がより一層求める場所・プレイス。それは、その人が、そこで何かしらの新しい発見ができること。その人の好奇心が刺激される場所なはずです。

日本のホテル業界、旅行会社だけではなく、サービス産業全般に言えること。それは、一つ一つの積極的な取り組みが、『独自の』『人生の新しい影響になるような』『心が満たされる経験・体験』『前向きな刺激』、そしてなによりも『嘘のない』誠実という要素が不可欠。そう感じます。」

Love it Portland Group Mt. Hood.jpg

何度もオレゴンを訪れる人の数は、驚くほど多い。その中でもオレゴンへの思いが断トツ強いのが、愛知の旅行会社が毎年主催する Love it Portland のツアー。毎年アテンドするのは、名古屋の有名ラジオDJ。ツアー内容の素晴らしさから、参加者はそれぞれ自分の人生を見つめ直し、次のステップに進んでいくという。(現在はコロナのため休止) Photo | Katsu Wanibe; Kobayashi Takuichiro

| 歳をとることは、一種の成長。毎日は不思議、そしておもしろい

ジェフさんのお話を聞いているうちに、著者は、2017年に米国で発行されロングセラーとなっている『IKIGAI』という書籍を思い出しました。因みに『生きがい』は、一言で説明しきれない意味合いを持つ日本独特の表現と価値観です。

コロナ禍とニューノーマルの時代。人々が仕事、キャリア、そして人生を見直すことを余儀なくされている時。社会から切り離されている層も増え続けています。それは米国でも同じこと。

このような背景で、『生きる理由や人生の目的を探す』『より充実した人生を送りたい』。何を人生の糧、羅針盤としていくのか、意識し始めている人も増えています。

クリエイティブにチャレンジし続けていけば前進して行ける。こうした行動を試みることが、ジェフさんの羅針盤になってきました。そんな経験を積みながらも、コロナ禍の影響から2020年にTPトラベルポートランドを解雇されたこと。このことに、失望していないと言えば嘘になると静かに語ります。

「今現在は、フリーランス。時に応じて、ライブセミナーを行ったり。この前も、自転車・サイクリング文化について話したばかりなんです。

以前とは、働く形態は変わりました。でもどんな形であっても、日本と関わり続けることは私自身の喜び。そして、自分の幸福度が高まるコトなんです。同時に、地域やまちのために役に立っている自分でいられる。これは、私の『生きがい』そのものです。」

この幸福度を保つためにも、もっと学び、理解し、成長し続けたい。その根源にあるのは『楽しい』という感情。そうきっぱりと話すジェフさんは、とても凛々しく映ります。

「家族、子供、そしてこの故郷ポートランドが、自分にとっての一番のプレイスです。でも、別の次元での私の生きがいは、日本との交流。そこから生まれる喜び。これは永遠に続くものです。」

コロナが少しずつ落ち着きだし、また、以前とは違う顔を生み出しているポートランドのまち。とはいえ、コロナ禍での孤立、未知なるものへの恐怖、共感やつながりの欠如は相変わらずです。ですから、そのような状態を治療する一つの方法が、『トラベルセラピー 』である可能性もあると教えてくれました。

こんな時代をスムーズに進むためにも、日常から踏み出す楽しさを忘れてほしくない。面白いを探す身近な小さな旅が、新たな力と生きる糧を与えてくれる。

今まで出会った、そしてまだ出会っていない日本の多くの人。一人でも多くの人が、オレゴンを訪れてくれることを願っている。満面の笑顔で、そう締めくくってくれました。

ふとした偶然から発生するコトに、意識を向けてみる。頑なにならないで、そのきっかけに自然に身を任せる。きっかけをパッとつかんだことで、新たなコトが目に見えない形で始まる。それが徐々に、自分でも驚くような一面に繋がっていく。

そんなことが起こりそうな、できそうな春の季節。

あなたができる範囲内で、ありのままでいられる居場所を探す小さな旅。そんな、ちょっとしたワクワク感に意識を向け始めてみるのはどうでしょうか。

今日からの一ヶ月間、すこし違う自分に出会うために、あなたはどんな場所に足を運び、どんなモノやコトに目を向けたいですか。

(DMで、教えてくださいね。)

次回のテーマは、『食の分野のポートランドモデル』。ポートランドの地産地消の第一人者の働きにフォーカスします。世界のグルメ通がこぞって訪れたレストラン。コロナや暴動の爪痕で開店休業に追い込まれた危機、そこからの脱却。今の日本の飲食店と同様の苦悩と復活とはサービス産業全般に向けた、多くのヒントを深堀りします。 513日掲載です!

記:各回にご登場いただいた方や記載団体に関するお問い合わせは、直接山本迄ご連絡頂ければ幸いです。本記事掲載にあたってのゲストとの合意上、直接のご連絡はお控えください。

 

Profile

著者プロフィール
山本彌生

企画プロジェクト&視察コーディネーション会社PDX COORDINATOR代表。東京都出身。米国留学後、外資系証券会社等を経てNYと東京にNPOを設立。2002年に当社起業。メディア・ビジネス・行政・学術・通訳の5分野を循環させる「独自のビジネスモデル」を構築。ビジネスを超えた "持続可能な" 関係作りに重きを置いている。日系メディア上のポートランド撮影は当社制作が多く、また業務提携先は多岐にわたる。

Facebook:Yayoi O. Yamamoto

Instagram:PDX_Coordinator

協働著作『プレイス・ブランディング』(有斐閣)

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