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イタリア事情斜め読み

ヴィズマーラ恵子|イタリア

イタリアのコロナウイルス後遺症「ポストコビット症候群」


| 魂の傷跡

イタリアでコロナウイルスの感染が爆発的に拡大し始め、特に酷かった暗黒の震源地であるベルガモ。

ベルガモのジョヴァンニXXIII病院の呼吸器科の責任者であるファビアーノ・ディ・マルコ教授は、「直感的ではないが、筋肉量を取り戻すことができれば呼吸も改善するだろう」と、述べている。

教授はCovidの間に行った業績が讃えられ、イタリア共和国功労勲章騎士(ナイト)の勲章の授与にノミネートされた。現在は入院中またはCovidの緊急治療室からの患者のフォローアッププロセスのマネージャーである。

ファビアーノ・ディ・マルコ教授は、

サルコペニア(筋肉量の減少)は、「筋肉のコンディショニング」と呼ばれる状態を引き起こし、息切れや疲労を引き起こします。体重は元に戻りますが、筋肉量はすぐには回復しません(平均して、患者は10キロを失った)。ケースごとに対象を絞ったリハビリが必要です。今のところ、私たちのフォローアップは退院した1,700人のうち1,200人の患者を対象にしています。最も頻繁に見られる症状は、確かに力不足と息切れです。ただし、結果は予想よりも深刻ではありません。病気は進行せず、時間の経過とともに改善します。肺のほとんどには傷跡が残りますが、それらは肺の機能に影響を与えないことがわかりました。一方、"魂の傷跡"はより目立ちます。多くの人々は以前の状態に戻れてはいませんから

と語った。

フランチェスコ・ランディ・デル・ジェメリは、心的外傷後ストレス症候群で深刻な結果をもたらす人々について「心理的な側面を過小評価しないように。それは、戦争の退役軍人に完全に同化している」と、話した。

マッシモ・ローダさん(53歳)は、3月10日にコロナウイルスの症状が出て陽性が確認された。病院に入院せず、「自宅隔離で様子を見てください」と言われ、家でコロナウイルスの症状で苦しんだ。

その後に肺超音波検査を受け、両側性間質性肺炎を患っていると診断された。肺に怪我をして、足の爪3枚を失った。

5か月後に何が残ったか?

「パニック発作、疲労、胸と背中の痛み、時々頭痛、不安、記憶喪失、信じられないほどのレベルで全て集中してやってくる感じで、
"まるで自分の中に他人がいるように感じる" 覚えていないのか・・・言葉が出てこないので、完全にフリーズしてしまい、うまく話せない」と、マッシモさんは語った。彼は、9月から精神科医にかかる予定だ。

| 注目の喪失

ジャンカルロ・チェルベーリ医師はコドーニョの精神科医は、「記憶喪失は多くの人によく見られるようだが、うつ病ではない」という。

「時々 、ウイルス感染症は炎症性サイトカインの産生が異常に増加し起こる。急性期タンパク質の産生を刺激し、中枢神経系の機能低下につながる可能性のある中枢神経系抑制に寄与する可能性のあるタンパク質分子である。これが注意力の喪失を起こす。日常生活の多くのイベントを記憶する能力が一貫して低下、一日の終わりにはいつも覚えているものの半分だけしか記憶できていないだろう。」

と説明し、体系的な研究はないが、数か月以内に残存症状が自然退行するだろうとも。

| 信じられて、助けられる努力

«特に朝は手が震えています。起き上がると以前より疲れが残っています。下肢の浮腫、胸部の圧迫感、息切れ、時には痛みがあります。疲労感は常にあり、他の症状が現れたり消えたりします。握力の低下、泡のようなじんましんによる皮膚の発疹、腸の問題。小さなことはたくさんあって、日常生活を送ることはできません。ホームのお年寄り達を抱え上げて連れて行かなければなりませんが、私には力がないため、仕事に戻ることはできません。どうすればよいですか? »

と、クレマ州の老人ホーム(RSA)勤務のローラ・ペリッツァさん(58歳)は言う。
彼女はコロナウイルスに感染し、3月12日に発症した。

| 筋肉と呼吸

リハビリが必要です。

「彼ら全員がうつ病や心気症ではないが、これらの問題を明らかにするものであるため、いくつかのテストを行う必要があります。」と、ヴェルノのIRCCS Maugeriでリハビリテーション肺炎学責任者のブルーノ・バルビ医師は言う。医師は、7月下旬に発表された「European Respiratory Journal」の臨床試験の2番目の署名者。

「ネガティブスワブ(陰性)急性期後の機能的および呼吸器系の問題を監視し、Covid-19 が多くの健康への重大な影響を及ぼし、日常生活の活動に障害をきたす事を確認した。このウイルスは多くのシステムに影響を及ぼし、一部の人では息切れを引き起こし、呼吸を妨げている。呼吸は、神経系と胸の筋肉が関与するプロセスによってできるので、患者にはリハビリが必要なのである。まだ私たちの国民保健サービスではカバーされていないが。」

とバルビ医師は語った。


「陰性になり回復した人はもはや考慮されない」

疾患を長い目で見て、対処するには健康診断と専門家の意見が必要である。

Facebookグループの目的は、他の国で行われているように、「ポストコビッド症候群」を広く認識させて、医療費の払い戻しを受けることも目標にしている。病気のため休業を余儀なくされているし医療費を支払う余裕がない。

陰性になったからといって、完全に治癒したというものではないという事をみんなに知ってほしいし、それを宣言することに意義がある。

 

Profile

著者プロフィール
ヴィズマーラ恵子

イタリア・ミラノ郊外在住。イタリア抹茶ストアと日本茶舗を経営・代表取締役社長。和⇄伊語逐次通訳・翻訳・コーディネータガイド。福岡県出身。中学校美術科教師を経て2000年に渡伊。フィレンツェ留学後ミラノに移住。イタリアの最新ニュースを斜め読みし、在住邦人の目線で現地から生の声を綴る。
Twitter:@vismoglie

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