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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

ドイツ・あの悲劇を忘れないために 過去と向き合う「つまずきの石」 発起人グンタ-・デムニッヒ氏に聞く

©norikospitznagel

「殺害予告はこれまで3回受けました。つまずきの石敷設に反対する市民にも出会いました」

ナチス政権によって迫害された犠牲者を追悼する記念碑「つまずきの石」の発起人グンター・デムニッヒ氏(76歳)は物静かな声で語ります。今もこの碑石を路上に敷設するプロジェクトを続ける同氏の想いを聞きました。(全画像 ©norikospitznagel)

「つまずきの石」とは

デムニッヒ氏がドイツ南部、バーデン・ヴュルテンベルク州マンハイム郊外の街ムターシュタット(住民約1万3000人)を訪問し、「つまずきの石」のレクチャーとこの記念碑を敷設するというニュースを知りました。このプロジェクトのために国内外を年間300日も移動するデムニッヒ氏に出会えるまたとない機会、早速レクチャー会場に出向きました。

18 spnoriko.jpg23日19時からレクチャー会場となったカルチャーセンターでデムニッヒ氏は、自身のアーティスト活動の紹介から、つまずきの石プロジェクトに至るまで、約1時間30分たっぷりお話をしました。おりしもこの日は国際平和の日。偶然だったのかもしれません。

日本でも知られるようになった「つまずきの石(Stolperstein)」ですが、ご存知でない方もいらっしゃるかもしれません。簡単におさらいをしたいと思います。

(画像・ムターシュタット市長トールステン・レーヴァ氏と談話するデムニッヒ氏)

02 spnoriko.JPG

1990年代初頭から、同氏は路上に四角い真鍮板を設置し続けています。ナチス政権によって迫害された人々が追放されるまで住んでいた家の前に。

1992年にケルンで始まったこの活動は、ハンブルクを中心に急速に発展しました。約30年にわたるプロジェクトを続けるデムニッヒ氏の功績は、今やドイツ国内だけでなく、多くのヨーロッパ諸国に広がり、世代を超えた意義を持つプロジェクトへと成長しています。

03 spnoriko.JPGちなみにデムニッヒ氏は、つまずきの石を「社会彫刻」と呼んでいて、「最も印象的なのは、いつも親類縁者に会うことです」と語ります。

つまずきの石は、96x96x100mmのコンクリート製の立方体石で、表面に碑文が刻まれた真鍮製のプレートが貼られています。時には犠牲者だけでなく、建物の前に「シュトルパーシュウェレ(Stolperschwelle)」と呼ばれる細長い石を設置することもあります。

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つまずきの石は1個120ユーロ(ドイツ国外は1個132ユーロ・2020/01より)。全て寄付金によりデムニッヒ氏と彼のチームメンバーが手作りします。細長い石は大きさにより寄付金も異なります。

「つまずきの石」が路上にある理由とは

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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