World Voice

魅惑の摩天楼、香港フォト通信

マリエ|香港

路上での祈り、豚肉批判などムスリムとの軋轢が香港では一切ゼロの理由

(筆者撮影)

日本のSNSでよく見るあの光景が、何故かここではゼロ

香港で暮らす日本人として、毎日街を歩いていてふと思うことがある

新宿や大阪の路上、公園などでムスリムの人々がマットを広げて路上で祈る姿が、最近日本では珍しくなくなった。金曜日の集団礼拝時になると歩道を塞ぐようなケースがSNSで話題になる。公共の道を「自分の祈りの場」に変えてしまう光景は、日本人の多くに「ちょっと待てよ」という違和感を残す。ところが香港ではそんな場面に一度も出会ったことがない。

香港の人口は750万人、そのうちムスリムは約30万人(全体の4%程度)。インドネシア人家政婦やパキスタン、南アジアを中心に、古くからコミュニティが存在する。公式のモスクは6つで、最大のモスクは3500人収容可能と、決して十分とは言えない。それでも路上で祈らせろと要求したり、実際にマットを敷く姿も一切見たことがない。

学校の食事も同じだ。日本では「給食にハラル食を用意しろ」という要求が出始めていて、時には「ずうずしい」と感じる声も上がる。香港は給食というのは無くキャンティーン(学生食堂)を利用するか弁当持参である。ムスリムの子どもたちは自宅から弁当を持参したり、キャンティーンには必ずベジタリアンメニューがあるのでそれを利用するのが一般的だ。

大学や一部の国際学校のキャンティーンにはハラル窓口があるケースもあり、秩序が保たれている。なぜ香港では日本で起こっていることが起こらないのだろう?

一つは英国統治時代から続く街の気質だ。香港は昔から中国人、インド人、欧米人、様々な人種がごちゃ混ぜに生きてきた。九龍モスクは1970年代から街の風景の一部で、地元住民も「モスクは香港の物だ」と自然に受け止めている。ムスリム側も長年この町で働き暮らす中で「公共の秩序を乱さない」という暗黙のルールを共有しているようだ。もう1つは香港という街の性格そのもの。世界有数の金融、観光都市として歩道を塞がれたら即座にビジネスや観光に響く。24時間動き続ける街でそんな余裕はない。

あと2020年に施行された「国家安全維持法(国安法)」の影響も少なからずある。国安法は分裂、転覆、テロ、外国勢力との結託を厳しく取り締まり、社会全体に「秩序を乱さない」空気を強く植え付けた。宗教活動自体は直接禁止されていないが、公共空間での目立つ集団行動に対する警戒心が高まったのは確かである。そうは言っても国安法施行前の時代も街中の路上で祈る人は1人も見たことはなかった。

香港を見て思うのは、

「歩道は歩くためにあり、自分の宗教は他人に押し付けない」
「おいらはハラル、あんたたちは豚肉の叉焼、それぞれに好きなものを食べよう」
「欧米で起きている豚肉禁止を求めるデモは国安法に阻まれ香港では絶対に起こらないし、絶対に出来ない」

ということだろうか。

ムスリムの大学生たちから聞いたこと

先日、香港大学に通うムスリムの学生さん4~5人と話す機会があった。2人は香港で育った移民で残りは香港に来ている留学生だ。興味深かった話は

1, ムスリムのコミュニティーでは長老(リーダー)が「路上での祈りは絶対にしてはいけない、ハラルなどの価値観を他人に押し付けてはならない」と下々にまで徹底して言い聞かせるそうだ。

2, 日本の路上や公園内で祈りをするムスリム移民の動画は香港のムスリムの間でも出回っていて有名。

3, 入れていい人たちもいるし、あとあと厄介になるから入れてはいけないある特定の層がいる。日本はそういうのをわかっていてやってるの?

香港の心地よさというのは双方が「この街ではこうする」という線引きを自然に守る文化を育てたことだと思う。そして「ゴミのポい捨て罰金約6万円、赤信号での歩道横断罰金約4万円、身分証不携帯は罰金」などのシステムが結果として心地よい共存を生んでいると私は思う。そんな高いお金払いたくないからみんな必然的に守るよネ! それに守るのが苦しくて仕方がないというルールではない。

最後に余談だけれど「財源がない」と日本政府はいつも言っている。香港並みの重たい罰金制度とインバウンド4000万人の入国税1人当たり2万円、観光客の免税措置廃止、在留許可の無い人の救急車の利用は10万円(香港は在留資格の無い人の利用は約10万円取られます)にしたら随分と絞り取れるのではないかしら?

 

Profile

著者プロフィール
マリエ

香港在住の雑貨が大好きなフォトグラファー。大学卒業後、自動車会社、政府機関、外資企業にて広報担当。夫の転勤で香港に移住後、カメラに興味を持ち、日本人、外国人フォトグラファーに師事。現在、雑貨を可愛く撮るカメラ教室「Zakka Styling」を主宰。同時に家族写真、ロケーションフォトの依頼もこなす日々。インスタグラムはこちら

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ