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ドイツの街角から

シュピッツナーゲル典子|ドイツ

ドイツ・ITBベルリン(国際旅行展)から見えた観光業界の今とこれから 価格高騰でも高まる旅行志向 

ドイツ観光業界の2022年収支 

コロナ禍により国内外の往来がストップし始めた2021年に、「旅行業界回復は2023年以降に ドイツ観光局CEOへードルファー氏の予測とは」を紹介した。

当時同氏は「旅行業界が元に戻るのは、2023年以降だろう」と予測した。だがこの見解はコロナ禍に直面していた2年前のこと。ご存知の通り、その後ロシアによるウクライナ侵攻が2022年2月から始まり、旅行業界にさらなる試練が待ち受けているとは誰も想像していなかった。

独連邦統計局によると、ドイツの宿泊施設は昨年、4億5,080万回の宿泊数を記録した。これは2021年よりも45.3%多かったが、コロナ大流行前の2019年よりはまだ9.1%少なかった。

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DZT2023年の重点テーマのひとつ「51の世界遺産」

2022年の宿泊総数内訳は、ドイツ国内からが前年比37.1%増の3億8270万泊だった。海外からの宿泊数は、2021年の2倍以上の6810万泊、+119.6 %とさらに高くなったことから今後も成長が期待されている。

ホテル、旅館、ゲストハウスといった宿泊施設業界は、コロナが発生した2020年と2021年に比べて大きく回復したものの、依然として危機以前の2019年の水準を大きく下回っている。2022年は、2019年よりも12.5%少ない宿泊数を記録したが、2021年よりも59.7%多い。

03 germanyspnoriko.jpgDZT2023年の重点テーマのひとつ「持続可能」な観光

休暇用宿泊施設とキャンプ場については、ポジティブな結果が出ている。宿泊施設利用者はほぼ2019年の水準に達したが(-2.8%)、キャンプ場は2019年と比較して12.4%宿泊数を増加させ好調だ。コロナ禍での自然回帰もあり、今後も自然の中で過ごす時間を選択する人が増えるとみられる。

2022年の経過を全体的に見ると、年初・年末ともに観光客の宿泊数が危機前の2019年の値(-19.8 %)を明確に下回っている。一方、2022年5月から10月にかけては、2019年と比較するとほぼ同じ数の宿泊客による宿泊があった(-2.5 %)。2022年8月には、5,800万泊という記録が達成された(2019年8月より0.3 %増)。つまり、夏の観光は、秋と冬の観光よりもコロナパンデミックから早く回復したと言えるだろう。

ドイツ観光業界の実情

ドイツの観光業界は、2022年のコロナ危機から部分的に回復したものの、パンデミック前の宿泊者数にはまだ達していない。だが明るい兆しも見えてきた。

連邦統計局の発表によると訪独外国人客の延べ宿泊件数は、2022年には 前年比で120%増え、3100万件から6810万件となった。この数値は、過去最多を記録した2019年の値の76%に相当する。

13 germanyspnoriko.jpgIPKインターナショナル社(観光コンサルタント会社) のヨーロッパトレンドテレグラムの最新データによると、個人のバカンス旅行はコロナ前の78%レベルにまで回復し、ビジネストリップ (68%) を上回っている。とはいうものの、ヨーロッパ人のビジネストリップでドイツがリーダー的存在であることに変わりはない。

ヨーロッパ諸国からの長期滞在者の数もコロナ前の79%レベルにまで回復し、短期滞在者(72%)を上回っている。訪独ヨーロッパ人1人あたりの平均支出額は1回あたり693ユーロ(+8%)、平均宿泊数は6.5泊。移動手段として、鉄道と自家用車の割合が増加している。ネット予約の割合は2019年に85%であったが、2022年は90%だった。

2022年のアンホルト・イプソス国家ブランド指数(NBI)でも、ドイツは調査対象となった60か国中、8度目の首位に輝くことができた。ドイツの物価レベルが国際競争で 生き抜くことができるレベルであることも要因の1つとなっているという。

2023年の見通しは?

Profile

著者プロフィール
シュピッツナーゲル典子

ドイツ在住。国際ジャーナリスト協会会員。執筆テーマはビジネス、社会問題、医療、書籍業界、観光など。市場調査やコーディネートガイドとしても活動中。欧州住まいは人生の半分以上になった。夫の海外派遣で4年間家族と滞在したチェコ・プラハでは、コンサートとオベラに明け暮れた。長年ドイツ社会にどっぷり浸かっているためか、ドイツ人の視点で日本を観察しがち。一市民としての目線で見える日常をお伝えします。

Twitter: @spnoriko

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