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南米街角クラブ

島田愛加|ブラジル/ペルー

2年ぶり、リオのカーニバル開催!!参加した小柳えめりさんにインタビュー

2年ぶりのカーニバル、どのような気持ちでしたか?

― 私は今までこのパレードに参加した方が無く、初めての出場だったので、正直2年ぶりという感覚や、特に「カーニバルが戻って来た!」と言う感覚は、長年参加している彼らとは少し違うかも知れません。
ですが、2018年から貯金も含めた留学準備をしていたのもあり、せっかくの思いでリオでの生活が始まった瞬間に始まったパンデミックやロックダウン、その時のホームステイ先の方からの指示でロックダウン後の3月から10月までの間に1歩も玄関を出てはいけない生活や、カーニバルの延期発表をされた時はとても心が苦しく、それでもと思い2020年の年末のカーニバル延期発表の後に急いでビザの延長をしたのですが、延長した1週間後に正式にカーニバルの中止が発表された時は、とても穏やかな気持ちではいられませんでした。
カーニバル時期にまた渡伯する事は可能ですが、本来の私の目的はカーニバルの参加では無く、練習の始まり(一般的に大体5月頃から)から最後までの彼らのプロセスや変化を長期にわたって追っていきたかったのと、長く仕事を中断する事は今後の人生の中で難しいと思っていたので、夢が閉ざされた気分でした。
2年ぶりのカーニバルの嬉しさと言うよりも、同じ状況、同じロックダウンなどの辛い状況や『待ち望んでいた、当たり前に迎えられると思っていた』カーニバルを迎えられなかった悲しみや喪失感を同じ地でブラジルの人達と過ごせたのは、2022年のパレードに参加させて頂く時に、彼らと同じような気持ちで迎えられると言う面ではとても貴重で、私にとっては必要不可欠な経験だったのだろうと思いました。

途中、日本に帰国しようとは考えませんでしたか?

― 延期が発表された後、私は再度ビザの延長が必要だったのですが、私が担当していた楽器のリーダーから「カーニバルが更に延長される可能性もある。一度日本に帰国しても、ブラジルにまた戻れるなら席は空けておくから大丈夫。」と言う言葉をかけて下さいました。
何を選択してもリスクはありますが、パレードよりも、練習で彼らと過ごす時間に対して価値を見出し始めていた私にとっては、一時帰国をして彼らと過ごす時間が短くなる方が辛かったので、再度延長手続きを済ませました。

練習期間や周囲の雰囲気はどんな感じでしたか?

― 延期が発表される前までは、私の肌の感覚では、開催されるだろう/されないだろう派、するべき派/すべきでない派と意見が分かれていました。
練習には2021年の12月中旬から参加させて頂きましたが、カーニバルの開催が危ぶまれている事を全く感じさせない集中力と熱気で溢れていました。
年に一度のカーニバルに対して長い期間をかけて仕事の後に夜中まで練習やら準備をしているサンビスタ*達はカーニバル後に休暇を取るのがルーティンになっているため、2ヶ月の延期は側から見ていても本当に辛そうでした。
私はカーニバルの為にこちらに来ているので、練習に対して楽しさしか感じませんが、定められていた日程がずれる事によってモチベーションの維持がとても難しくなっているように感じました。
最後の練習は通常、本番の1週間前から2週間前には終わるのですが、その更に1ヶ月前から「NÃO AGUENTO MAIS ENSAIAR(もう練習に耐えきれない!」がみんなの口癖でした(笑) そんな中でも練習が始まってからの皆の笑顔を見ると、この文化を愛しているんだなぁと実感させられました。

   *サンビスタとは、サンバと愛し、サンバと共に生きる人

コロナ禍で練習に支障はありましたか?

― 一番の影響は大通りを封鎖してパレード形式で練習することが禁止されたことです。地元の人達やファンの人達も集まり大人数が密集する事から感染拡大防止をする為に禁止令が出ました。
マスク着用義務が続いていた時の練習会場での練習は、熱気もあいまってなかなかキツイものがありました(笑)
私個人としては延期によって良かった点もあります。 本番前に、各チーム一度ずつ本番の会場を使った通しリハーサルが本番前に行われるのですが、もし2月末開催だった場合は工事の関係でそれが出来ないとされていました。 4月末に延長された為、大通りと会場でリハーサルを行う事が出来ました。

最後に、カーニバルに参加した感想を聞かせてください。

― パレードでは各チームが毎年テーマをもって歌詞、衣装や山車など様々な方法でそのテーマを表現します。ブラジルの中でもカーニバルに対して価値を見出さない人、サンバに全く興味の無い人がいるのは事実ですが、2年ぶりの開催によりその表現のパワーがより強く発揮されて、個人的には他の年よりも"更に"存在価値を強く主張出来たのでは無いのかと感じましたし、そうである事を願います。
サンビスタ、サンバを愛する全ての人達が心から待ち望んでいたカーニバルパレード、延期された事によるフラストレーションも全て含めて迎えたパレードが始まった瞬間は、私を含めて多くのメンバーが涙を抑える事が難しく、ただただ幸せと感謝の気持ちで溢れる空間でした。
ブラジル人の自分の感情に対する素直な表現力による、とても胸の打たれる豊かな文化のど真ん中でそれに触れさせて頂けた事に改めて深い感謝と喜びでいっぱいです。

えめりさんの言葉を聞いて、"リオのカーニバル"というのは非常に特別なものだと再認識した。
彼らはサンバと共に生き、そのコミュニティを通して社会的活動も行う。
コミュニティが生まれた地区では、今でも人が支え合って生きている。

ブラジルでカーニバルは元々ガス抜き的な役割をしていた事は事実だが、このコンテスト式のカーニバルは本来の在り方を超え、参加者が自分たちの訴えを表現する芸術文化だと私は思う。

今回優勝したチームGrande Rio(グランジ・リオ)のテーマは、アフリカ系ブラジル人から生まれた宗教の神エシューへの偏見をなくすものであったし、サンパウロのコンテストではワクチン反対派の大統領がワニになるという大胆な政治的パフォーマンスもあった。(大統領とワニの関係はこちらを参照して頂きたい:『ワクチン接種して私は半分だけワニになった』 )

カーニバルにおける偏ったイメージというのは、世界はもちろんブラジル国内にも存在しているのは、報道の仕方にも問題があるだろう。
カーニバルについて話す時、少しでも真実を知ってもらえればと常に考えている。

来年、カーニバルが本来の期間に開催されるなら、サンビスタたちは殆ど休むことなく次のコンテストへの準備を始めることになるが、それでも、無事に開催される事ほど嬉しい事はないだろう。

今回のカーニバル開催がブラジルのエンデミック突入への兆しであってほしいと願っている。


今回インタビューを引き受けて下さった小柳えめりさんがカーニバル当日の様子とその心境を動画で発表していますので、ぜひご覧ください。

 

Profile

著者プロフィール
島田愛加

音楽家。ボサノヴァに心奪われ2014年よりサンパウロ州在住。同州立タトゥイ音楽院ブラジル音楽/Jazz科卒業。在学中に出会った南米各国からの留学生の影響で、今ではすっかり南米の虜に。ブラジルを中心に街角で起こっている出来事をありのままにお伝えします。2020年1月から11月までプロジェクトのためペルー共和国の首都リマに滞在。

Webサイト:https://lit.link/aikashimada

Twitter: @aika_shimada

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