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スペインあれこれつまみ食い

松尾彩香|スペイン

来月に迫った総選挙 右傾化するスペイン

©️YouTube - 28-M | SÁNCHEZ adelanta las ELECCIONES GENERALES al 23 de julio en España | El País

解散総選挙まで1ヶ月をきったスペイン。総選挙はこれまで任期満了の12月に行われると予想されていましたが、5月に行われた統一地方選挙で与党が大敗したことを受け、急きょ総選挙の日程を大幅に早める決断を下したようです。

現政権を握っているのは中道左派の社会労働党(PSOE)。16歳から自己申告で性別を変えられるトランス法を制定したり、女性管理職の割合を増やすためにクオータ制を導入するなど、世界でもまだ浸透していない先進的な(?)法整備を果敢に行ってきた現政権ですが、傍目から見ているとなんだか与党が突っ走っていて国民が置いてけぼりになっているような感覚を少々覚えていました。実際、地方選挙で右派が12の州のうち7つの州で第一党となった結果を踏まえると、多くの国民はこの左派が引っ張るムーブメントに少々うんざりしてきていたのかもしれません。

 

スペインでも政治の右傾化?

去年イタリアで極右政権が誕生したように、ヨーロッパでは政治の右傾化が進んでいると言われています。この傾向は移民問題やロシアのウクライナ侵略の影響を受けているとされていますが、どうやらスペインもこの波に乗りつつあるようです。5月28日に行われた統一地方選挙ではかなり多くの自治体で中道右派の国民党(PP)が勝利を収めました。さらに勝利した各地の国民党(PP)は、より力を伸ばすために極右政党のVOX党と手を組む動きをすすめているのです。40dBが行った世論調査によると昨年の夏あたりから国民党(PP)の人気が社会労働党(PSOE)を上回ってきているため、来月行われる総選挙で国民党(PP)が勝利し、他のヨーロッパ諸国同様に右派政権が誕生するという可能性は大いにあると言えるでしょう。

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©️YouTube - 23-J: ¿Cuál es la estimación de voto de las encuestas? El análisis de Kiko Llaneras | EL PAÍS

  

極右政党のVOX党の過激な広告が話題に

そんな中、先日首都マドリードで極右政党のVOX党が打ち出した巨大な広告シートが話題になっています。この広告には、LGBTコミュニティやフェミニスト、持続可能な開発のための2030アジェンダなど現政権が力を入れて取り組んできたテーマを表すマークがゴミ箱に捨てられている様子が描かれており、ヘイトスピーチだとして一部から批判の声が上がりました。結局、選挙期間外に選挙活動を行ったとして選挙管理委員会から注意を受け、数日後にこのシートは取り外されることになりましたが、このような過激な表現が政党のアピールとして採用されてしまうほどスペインの二極化は進んでしまっているようです。

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話題の広告©️YouTube - La Junta Electoral ordena a Vox retirar su lona donde tira a la basura distintos símbolos políticos

 

LGBTの旗を飾らない

バレンシア県のナケラでは地方選挙でVOX党が勝利を勝ち取りました。その後、国民党(PP)と手を組み新しい市役所の方向性を表した20項目が発表されたのですが、その中に「LGBTの旗を市役所に飾らない」という項目があったことが物議を醸しています。これまでLGBTコミュニティへの理解を推進するため、市役所や公共施設でLGBTコミュニティーのシンボルであるレインボーフラッグを掲げることがもはや当たり前だったスペインですが、地方選挙を終えてその当たり前が覆されつつあるようです。6月28日は国際プライドデー。例年通りなら街の公共施設にレインボーフラッグが飾られたり市役所が虹色にライトアップされたりと、行政からのLGBTコミュニティに対する理解が示されたりするのですが、PPとVOXが手を組んだ自治体の中にはこの旗が飾られなかった自治体もあったようです。また旗を飾っている自治体に対しVOX党が旗を撤去するように圧力をかけるなど、これまで現政権が作り上げてきたムーブメントを振り出しに戻すような動きが各地で見られたようでした。

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カタルーニャ州庁には旗が飾られた©️YouTube - Aragonès cuelga la bandera arcoíris en el Palau de la Generalitat

 

リベラルに疲れたスペイン人?

LGBTや女性の権利など、今のサンチェス政権では多様性や弱者救済などに重点をおいた政治が目立っています。一方で、パンデミックやウクライナ戦争などでダメージを受けている経済を立て直すことや、治安の悪化などを解消することなどに対しては少々消極的で、その点が保守的な考え方を持つ国民の不満を買う大きな要因となっていたようです。そんな不信感の中でトンネルに入らない国鉄の車両を誤発注して税金を無駄にしてしまったり、詰めの甘い法律を制定して性犯罪者を大量に減刑してしまったりと国民の期待の逆をいくような出来事が立て続けに起こったことで、ついに国民が愛想を尽かしてしまった、という流れなのかもしれません。

来月行われる総選挙で中道右派の国民党(PP)が勝利すれば、極右政党のVOX党と連携する可能性は少なくありません。VOX党は同性婚に反対で、中絶手術にも反対という意見を持っている超保守派の政党。この2党が手を組めば、これまでの「多様性!自由!」のイメージだったスペインと全く違った新しい顔を持つスペインが誕生するかもしれません。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

2015年スペイン巡礼(カミノデサンティアゴ)フランス人の道を完歩。スペイン語習得のために渡ったコロンビアでコーヒー農家になるもスペイン移住の夢が捨てられず、現在はコロンビアのコーヒー事業を継続しながらマドリードのベッドタウンでひっそりとスペインライフを満喫中。

Twitter: @maon_maon_maon

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