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悠久のメソポタミア、イラクでの日々から

牧野アンドレ|イラク

イラクで相次ぐ活動家の暗殺、そして過熱する抗議デモ

イメージ画像 ©Simon Lehmann - iStock

イラク時間5月9日の早朝、イラク国内で有名な反汚職活動家であったエハブ・アル=ワズニ氏がカルバラ県の自宅近くで何者かに襲撃、殺害されました。

政治家の汚職を糾弾し「カルバラの英雄」とも呼ばれていた著名な活動家であった彼の死はイラク全土に衝撃を与え、その翌日にはカルバラ県で数百人の市民が彼の殺害を非難するデモを行い、治安機関に対して犯人を見つけなければ暴動を起こすと主張もしています。

デモはディカル県やナシリーヤ県にも飛び火し、道路を封鎖するなどの抗議活動が行われました。
  
  

逮捕されない犯人、背景には有力政党か?

今年の夏に総選挙を控え、イラクでは民主活動家や反汚職活動家の暗殺が昨年から度々ニュースを騒がせています。
昨年8月には南部バスラ県で著名な活動家であったタハシン・アル=シャマーニ氏が他のデモ参加者とともに殺害され、その場に居合わせた他2名が重傷を負うという事件が起き、昨年12月にはバグダードにおけるデモの中心的人物であったサラー・アル=イラーキー氏がバイクに乗った何者かによって暗殺されました。

また今年の2月には中部ナジャフ県でデモ隊数十名が武装した男たちに襲撃を受け、同時期に南部のナシリーヤ県では3名の活動家が暗殺されました。

しかしこれらの襲撃に対して、犯人が捕まることは決してありません。
冒頭のカルバラ県の事件で、抗議デモの参加者が暴動を示唆するまでの行動に出ているのにはこのような背景があります。

犯人は親イラン系の政党に属する民兵組織であると見られていますが、地元政府にも政党の影響力が強く犯人が全く逮捕されないという事実があります。

2014年以降、対過激派組織ISISの戦闘でイランが積極的にイラク政府を支援したことを背景に、イランはその後イラク国内で影響力を増強させています。

イラクはざっくり国民の6割がイランと同じイスラム教シーア派に属していると見られていますが、残りの4割に属するスンニ派やその他宗教以外も、シーア派内部からイランの影響力増大に反対する派閥も存在しています。

殺害された活動家たちもイランや親イラン民兵に目を付けられ、暗殺されたのではと見られています。

「誰も公言しないけど、みんな誰がやったかは分かっている」

親イラン民兵組織による超法規的措置がここ最近のイラクでは当たり前になってしまっています。

また国連もこの状況を「免罪が横行している」とし、イラク当局への非難を強めいています。
  
  

2019年から反政府デモが続くイラク

首都バグダードを中心とした2019年10月のデモは、経済状態の悪化への不満と政治家の汚職に起因していました。デモ隊は治安部隊とも衝突、当時少なくとも565人が2ヵ月の間で殺害されました。

昨年就任したばかりのカーズィミ―首相は、「犯人を追い詰める」と徹底的な調査を約束していますが、今現在活動家らの殺害に対して犯人が逮捕されたというニュースはありません。

夏に総選挙を控え、イラクでは情勢の悪化が再び懸念されています。

 

Profile

著者プロフィール
牧野アンドレ

イラク・アルビル在住のNGO職員。静岡県浜松市出身。日独ハーフ。2015年にドイツで「難民危機」を目撃し、人道支援を志す。これまでにギリシャ、ヨルダン、日本などで人道支援・難民支援の現場を経験。サセックス大学移民学修士。

個人ブログ:Co-魂ブログ

Twitter:@andre_makino

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