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ラッシャー貴子|イギリス

サッカー女子EUROで初優勝、イングランド女子代表がくれた喜びと未来

BBCによれば、フットボール・アソシエーションが関与する女子チームは9251チームあり、イングランドだけでも女性のサッカー人口は340万人に及ぶそうだ。サッカー初心者のわたしには、女子は男子に比べてよくヘディングをするように見えたのだけど、どうなんだろう。女子サッカーならではの楽しみも見つけてみたい。写真 iStock skynesher

 7月の1か月間、サッカーの欧州女子選手権2022(EURO2022)がイングランドで開催された。パンデミックの影響で昨年の予定が今年に延期されたもので、ヨーロッパの16チームが参加した。

 わがイングランドのライオネシス(Lionesses、「雌ライオンたち」の意味で、イングランド女子代表の愛称)は初戦から順調に勝ち進んだ。それにつれて女性と子どもたちを中心にファンが急増した。イングランドは徐々に興奮に巻き込まれていき、その熱気はサッカー初心者のわたしにも伝わってきた。

 大会最終日の7月31日、決勝戦に進出したライオネシスは、8度の優勝経験があるドイツを2対1で破って優勝に輝いた。イングランド女子が主要国際大会で優勝したのは初めてのことだ。

 イングランドは男子もEUROで優勝したことがなく、昨年の男子大会では決勝で延長の末、PK戦でイタリアに敗れるという悔しさを味わった。その記憶も新しいだけに、今回の女子の快挙にサッカーファンは狂喜して、イングランドは各地でにぎやかなお祝いムードに突入した。

BBCニュースのInstagram公式アカウントの投稿より、決勝戦、1対1で迎えた延長戦の後半で、クロエ・ケリー選手が決勝ゴールを決めた直後に喜びあうライオネシズ。最初の写真の右側がケリー選手。男女を問わず、試合中にシャツを脱ぐのは即イエローカードと今回初めて知ったのだけれど、彼女はさっとスポーツブラ姿になり、脱いだシャツを振りまわして喜びを全身で表現した。イングランド女子の快挙と合わせて、この場面は歴史に残ると言われている。

 優勝が決まった直後のウェンブリー・スタジアムも大騒ぎだった。選手もファンも大喜びで飛んだり跳ねたり、歌ったり涙を流したり。その後の記者会見でも翌日の祝賀会でも、ライオネシスの選手たちは無邪気にはじけまくっていた。プロの選手も多いのに、アマチュアどころか、まるで学生のパーティーのようなノリで、かえって新鮮だった。純粋に嬉しすぎて興奮していたのか、若い女性たちだからなのか、男子選手のようにマスコミ慣れしていないからなのか。とにかく初々しさがほほえましくて、ますます応援したくなってしまった。イングランド女子、本当におめでとう!

BBCなどニュースメディアに関わるアレックス・ミルソムさんのTwitter投稿より、決勝ゴールを決めたケリー選手のインタビュー。BBCのインタビューの最中、彼女は歌っているチームメイトに加わるためにマイクを持ったまま走り去った! 前代未聞のインタビューとしてこの映像は繰り返し再生された。この時に歌っていた『スイート・キャロライン』はお決まりのサッカーの勝利の歌で、これを歌うことは勝利を味わうということ。彼女としてはどうしても外せなかったのだろう。確かにプロ選手らしくはないかもしれないけれど、自分に正直な姿がほほえましかった。もちろん、歌い終わった後にマイクとともに戻ってきて、ふたたびインタビューに応じた。

 と、話はここで終わらない。若きライオネシスは、初優勝以上の大きな喜びをわたしたちにもたらしてくれたからだ。

 ひとつは、サッカーを愛する少女たちに夢と希望を与えてくれたことだ。全国の少女たちは、男子も経験していないEURO初優勝を成し遂げた女子チームの姿を自分の目でしっかりと見た。そしてライオネシスをたのもしいロールモデルとして、自分もこうなれるかもしれないと明るい希望を持った。

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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