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ラッシャー貴子|イギリス

高くなったハードルを越えて2年半ぶりの里帰り

 その後状況は悪化して、行列が全然進まなくて飛行機に乗り遅れたとか、チェックインの係員が1人しかいなかったとか、空港に置き去りにされた手荷物が届けてもらえないとか、もういろいろな話をずいぶん聞いた。ヨーロッパ便も多いが、日本に行くフライトでも珍しくない。

里帰り - 2.jpeg

帰りの飛行機から見えた北極の景色。ウクライナ侵攻の影響で日本行きのフライトは通常どおりロシア上空を飛べず、迂回するので飛行時間が2、3時間長くなっている。わたしが乗った日本航空のロンドンー羽田便では、往路はトルコやアゼルバイジャンなどを通過して、復路はアラスカや北極の上空を通った。北極をこの目で見ることができたのはとても嬉しかったけれど、いつもより長いフライトはどうしても疲れる。しかも機内ではコロナ対策で食事の時以外マスクをしたままだ。14時間ずっと。筆者撮影

 やはり戦争の影響で、もともと高かった燃料費がさらに値上がりしているので、航空運賃も急騰していた。あまりこの時期に日本に行かないので単純には比べられないけれど、今回のフライトはいつものほぼ倍額。秋以降の値段も、これまでより少し燃料費が高いようだ。

 その上、戦争や人手不足の状況に合わせて航空会社が予定を変えるので、フライトの欠航や時間変更も日常茶飯事だ。何か月も前から連絡が来ることもあるし、直前に告げられることもあるようだ。その度に問い合わせが相次ぐので、航空会社の電話はパンク状態、空港のカウンターにも誰もいなかったりするらしい(ひゃー、人手不足かな)。

 いろいろな話を聞いていると、ヒースロー発が1時間遅れたぐらいで済んだわたしの旅は奇跡だったんじゃないかと思える。夏休みに入って、これから日本に行こうとしている友人は、飛行機が日本に着くまで安心できないとはらはらしている。預けるスーツケースの所在地がわかるように、エアタグを着けて自己防衛する賢い人も増えた。

 こんな大きな不安を抱いて、大きなリスクを負っても、日本に里帰りはしたい。特に日本の水際対策が緩み始めた今年に入ってから、続々と里帰りの話を聞く。たぶん今年は9割ぐらいの友人・知人がすでに一時帰国したり計画したりしている。

 里帰りのいちばんの理由は家族や友人に会うことだ。わたしはたまたまコロナ禍直前に帰っていたのでほぼ最短の2年半ぶりで済んだけれど、3年ぶり、4年ぶり、5年ぶりになった友人もいる。小さいお子さんは、日本のご家族に会えなかった間、どれだけ成長したことだろう。わたしの世代では親が高齢になって来ているし、気心の知れた長年の友人とのおしゃべりで命の洗濯もしたい(コロナもあって、今回はあまり会えなかったけれど)。

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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