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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

開発途中、イングランドの「ワクチンパスポート」を取ってみた

 まずアプリをダウンロードして登録する。ふだんあまり用のないNHS番号が手元になくても登録できるように工夫されていて、途中まではさくさく進む。ただし、このアプリはNHSに保存される個人情報のデータともつながるので、後半は本格的な本人確認が求められる。まずはパスポートや運転免許など写真付き証明書の写真、さらにはその場で表示された数字を読み上げる動画を送るのだが、どちらもアプリの指示に従うだけで簡単に撮影でき、あっけないほどぱっと送れてしまった。最近のアプリはこんなこともできるのか! 技術に疎いわたしは、正直なところ少し怖くなったほどだ。

 ちなみに動画を送るのは、動いている姿で本人かどうかを判断するためだそう。音読の代わりに数字を書いて提示する方法も選べるようになっていて、声が出ない人への配慮も感じられた。さすが医療機関のアプリだ。

 登録が済むと「確認には7日程度かかります」というメッセージが出る。が、わたしの場合は10分後には確認完了の連絡がきたので、早速ログインしてみた。最初のページに氏名、生年月日、NHS番号が示されて、その下にいくつかの項目が並んでいる。その項目のひとつ、Covid-19 vaccine record(コロナワクチン記録)をクリックして表示されるのが接種証明だ。書かれているのは2回のワクチン接種の日付、ワクチンのメーカー名、バッチ番号だけで、バーコードやQRコードはない。

 本当は接種証明の画面の写真を載せようと思っていたのだけど、会場で記入される「予約カード」でさえすでに偽造品が売買されているとよく聞くので、やめておくことにした。わたしのようなIT出遅れ組には想像がつかないことを難なくこなす人がいるかもしれないので。代わりと言ってはなんだが、すでに偽造されているらしい予約カードの写真をどうぞ。これは公式の接種証明にはならないとNHSのサイトにはっきり書いてあるので問題なさそうだ。

ワクチン証明 - 1.jpeg

接種会場では、このカードの裏面に情報を手書きしてくれる。噂になっている偽造品は1枚25ポンドで買えるらしい。値段まで毎回同じだったのが妙にリアルで怖い。ワクチンを受けたくないけれど不利な立場には置かれたくない人が買うのかな。(筆者撮影)

 ワクチン接種証明が保存されるこのNHSのアプリ、今はコロナ関連を優先しているのか、他の機能はまだまだ開発中なのだけど、緊急時で仕方がないということで。セキュリティー面では、画面を少し離れただけでログインし直すシステムになっていたりして、慎重な対策が取られているように思える。そうでなければ、その辺のパブや美術館に個人情報が簡単に漏れてしまいかねない。

 ちょっと興味がわいて試してみたら、このアプリはNHSのウェブサイトにもつながっていることがわかった。同じパスワードでウェブサイトにもログインすることができたのだ。ウェブサイトからはQRコードのついた証明書を印刷することもできるが、コードの有効期間は2週間なので、印刷するのはあくまで必要になった時の方がよさそうだ。

 先ほども書いたように、まだこの「ワクチンパスポート」を使う場はほとんどない。予定どおりイングランドが検査の陰性証明の情報を追加したらこれから必要になるかもしれないが、ワクチン接種が進んで感染者数が激減し、行動制限もパスポート制度も廃止されたイスラエルの例もあるので、まだわからない。イングランドでは、英国全体では、これからどうなっていくだろう。

 

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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