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イタリアの緑のこころ

石井直子|イタリア

イタリアの子供とベファーナと年末年始の贈り物

マルケ州ファブリアーノの町の空飛ぶベファーナ 2018/1/6 photo: Naoko Ishii

 イタリアでもまもなく新年が訪れます。例年新しい年が訪れた瞬間から、夜空を彩り、にぎやかに打ち上げられる花火の音が聞こえてきます。

 日本ではお正月に、数ある楽しみの中でも、お年玉を心待ちにしている子供たちも多いことでしょう。一方イタリアでも年末年始は、今では日本でも贈り物を待つ子供が多いであろう12月25日はもちろんのこと、年が明けた1月6日も、子供たちが贈り物をもらえるうれしい日です。

 1月6日は、カトリック教会では、東方の三博士が長い旅の末に、ようやく幼子イエスに面会を果たして贈り物を捧げたとされる祝祭日、主顕節で、イタリアでは、国民の祝日であり、クリスマス休みが終わり、クリスマスツリーやプレゼーペ、イルミネーションなど、クリスマスの飾りが家や教会、町を彩る最後の日です。というわけで、イタリアでは、クリスマスの祝いが新年の1月6日まで続きます。

 1月6日は同時に、ベファーナおばあさんがホウキに乗って空を飛び、子供たちの家を訪ねては、子供たちがいい子にしていれば、お菓子を贈り、悪い子であれば、木炭をつめていくという日であり、そのお菓子いっぱいの靴下を、子供たちが楽しみにしている日でもあります。様々な形でベファーナ祭りを催す市町村もあり、マルケ州のファブリアーノには、空飛ぶベファーナという祭りがあり、2018年には美しい光に彩られた中心街の広場に大勢が集まって、高い塔から広場の反対側まで張った綱を伝って降りていくベファーナを、皆が一心に見守っていました。

 では、どうしてこのベファーナおばあさんが、世界中の子どもたちにお菓子を贈ることになったのでしょう。伝説によると、東方の三博士たちが、ベツレヘムへの道が分からず困っていたときに、教えてくれた老婆に、いっしょに来てほしいと何度も頼んだのですが、老婆はそのときには同伴はしなかったそうです。そして、のちに後悔して、お菓子いっぱいのカゴを手に、三博士たちを探したものの、見つけることができなかったために、帰り道に、すべての家に立ち寄って、子供たちの一人が幼子イエスでありますようにと願いながら、子供たちにお菓子を贈ったのだそうです。

 さて、476年の西ローマ帝国崩壊以降、1861年のイタリア統一まで、ずっと政治的に分断されていたイタリアでは、食を始め、各地に様々な異なる文化があるのですが、実はその違いは、年末年始に子供たちに誰が贈り物をするか、その贈り主にもありました。今でこそ、イタリアでも、グローバル化が進み、主としてアメリカ文化の影響を受けて、クリスマスに贈り物をするのはサンタクロースということになりましたが、それまでは実は、それぞれの土地で、贈り物をする人が違っていました。たとえば、わたしの夫やその兄弟は、クリスマスには幼子イエスが贈り物を贈ってくれるのだと、ウンブリア出身の両親から聞いて育ちましたが、エミリア・ロマーニャでは、贈り物を贈るのはベファーナ、あるいはべファノーネだという地域があちこちにあったそうです。そうした各地域の独特の文化が、まだ残っている地域もあるものの、なくなったり変わっていってしまっていったりしていくのは、とても残念なことです。クリスマス前後の贈り物の主については、次の記事に詳しく書いてあります。興味があれば、ぜひお読みください。

 

Profile

著者プロフィール
石井直子

イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。

ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia

Twitter@naoko_perugia

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