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石井直子|イタリア

聖ベネデットの火、ノルチャから平和と癒しの灯をヨーロッパに

ノルチャの聖ベネデット像と教会、市役所 2021/1/7 photo: Naoko Ishii 

 平和とヨーロッパの団結を祈って、今年も聖ベネデットの火(Fiaccola di San Benedetto)が、2月27日にノルチャでともされました。教皇パウロ6世が、ノルチャの聖ベネデット(480年頃〜547年)をヨーロッパの主要な守護聖人とし、その記念日を3月21日と定めたのは、1964年のことです。

 例年であれば、点灯された火は、ヨーロッパ連合加盟国すべての首都を、希望・統一・再生を象徴する灯火としてめぐるのですが、新型コロナウイルス感染症の拡大のために、今年はそれができません。その代わり、イタリアにおける新型コロナウイルス感染症の象徴となる場所、ローマのスパッランツァーニ国立感染症研究所に3月17日に、ベルガモのジョヴァンニ23世病院に3月18日に運ばれ、3月20日の晩にノルチャに戻ることとなっています。

 点灯式は、ノルチャの聖ベネデット教会のクリプタで行われ、式典には、ノルチャ、スビアーコ、カッシーノの行政および宗教の代表者が参列しました。2016年のイタリア中部地震で、聖ベネデット教会が正面の壁を残して崩れ落ちて以後、そのクリプタの内部で点灯式が行われるのは、今回が初めてとのことです。

 被災地ノルチャの市長は式典で、「聖ベネデットの戒律を心に、期待と希望の言葉をこのノルチャから、復元力・希望・未来への期待を具現する町から送ります。皆が力を合わせれば、きっとできるはずです」と述べました。

 ウンブリア州ノルチャは、聖ベネデットが生まれ育った町であり、ラッツィオ州のスビアーコは、聖ベネデットが隠者として3年間岩間の洞窟で過ごし、最初の修道院を築いた地です。そして、やはりラッツィオ州にあるカッシーノは、スビアーコで再度毒を盛られる事件があったあと、自らと弟子たちの命を守ろうと、聖人が移住してモンテ・カッシーノ修道院を設立し、亡くなった町です。

 聖ベネデットの火の点灯式では、スビアーコの市長もまた、この聖ベネデットの火は「イタリア全国にとっての希望のともしび」であると述べ、さらに、「感染下で点灯式を行うべきかどうかとためらっていたときに、スビアーコの聖なる洞窟に書かれた言葉、『闇が深いときにのみ星が輝きを放つ』という言葉にその答えを見出し、だからこそ、希望の火を絶やさないことが必要だと感じたのです」と語っています。

 また、モンテカッシーノ修道院長は、「戦争や疫病、凶作などで荒廃した中世のヨーロッパに復興をもたらした聖ベネデットの言葉は現代にも通じ、平和と人々が互いに助け合うこと、悪を許さないこと、それこそが今日疫病に立ち向かうにあたっても大切なのです」と伝えています。

 今もなお新型コロナウイルスが猛威をふるうヨーロッパ、そしてイタリアで、かつて混迷の中に秩序と平和をもたらした聖ベネデットの火を、生地のノルチャから、聖人にゆかりの深い地の代表が集って、希望と祈りの言葉と共に送り出すことの大切さを思います。

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Profile

著者プロフィール
石井直子

イタリア、ペルージャ在住の日本語教師・通訳。山や湖など自然に親しみ、歩くのが好きです。高校国語教師の職を辞し、イタリアに語学留学。イタリアの大学と大学院で、外国語としてのイタリア語教育法を専攻し卒業。現在は日本語を教えるほか、商談や観光などの通訳、イタリア語の授業、記事の執筆などの仕事もしています。

ブログ:イタリア写真草子 Fotoblog da Perugia

Twitter@naoko_perugia

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